カテゴリー: 2020 岩室の平屋

屋根端部をすっきりと納める方法

「岩室の平屋」現場では現在、屋根工事が行われています。今回の屋根は、ガルバリウム鋼板葺きとしているのですが、ガルバリウム屋根葺きと一言で言っても実は、さまざまな葺き方があります。瓦棒葺き、縦ハゼ葺き、横葺き、と、その他多数。近年は、現場での施工手間を減らすため、パチパチと留め付けるだけで簡単に施工が完了するタイプの屋根葺き工法もあって、施工時間の短縮化、施工手間の軽減が大幅に図られています。(同時に防水性能の向上も年々、図られているようです。)

ガルバリウム鋼板自体も年々、性能が上がり、さび保証20年以上の高耐候製品や遮熱性能を持つ製品も現れてきています。工事コストと屋根防水性能を考えると、他に選択肢がないくらい、ガルバリウム屋根が国内の屋根業界を席巻しているのが現在の状況です。

今回、屋根葺きに採用したのは、昔ながらの手で締め付け加工を行う「縦ハゼ葺き工法」。なぜわざわざ、と思われるかもしれませんが、敢えてこの方向を選択したのは、見た目がすっきりと美しく納まるから。

・軒先に雨どいを取り付けないので軒先が良く見える
・平屋で建物の高さが低く、軒先が近くに見える
・平屋の特徴である水平ラインを強調したい

これらの要素を考慮し、縦ハゼ葺きのハゼ部分を軒先端部でつぶしたシャープなデザインにしたい、と考えました。そんな細かい所まで、と思われるかもしれませんが、そのような小さな部分を積み重ねることで、最終的な建物の見え方が大きく変わってきます。上の写真は、屋根の端部納まり部分。屋根端部でハゼの立上り部分を折り曲げ処理し、水平ラインがくっきりと、すっきりとします。

上の写真は、縦ハゼを締め込んでいくための道具「ハンドロールシーマー」。

職人さんの話では、近年、簡易型のキャップ式施工方法が主流で、手加工をしたのは、数年ぶりとの事。施工方法が簡易化・効率化していく流れの中、このような手間の掛かる工法は、いつか姿を消していくのかもしれません。

隣り合った屋根材の立上り部分を専用の道具で掴んで折り曲げていきます。折り曲げることで屋根材同士が一体化し、継ぎ目のない一枚の屋根となります。端部は大きなペンチのような道具(通称「がちゃ」と呼ぶそうです。)を使ってがちゃ、がちゃと締めこんでいきます。長い召し合わせ部分は、ハンドロールシーマ―で、立上りに沿ってローラーでぐいぐいと押し込んで締めていきます。


設計者としては年々、工法の選択肢が減っていくのは非常に悩ましいことではあるのですが。デザイン上、選べるものが無くなっていくことですので。もしかすると数年後には、手で加工するこのような工法を現場で目にすることが無くなっているかもしれません。

 

ウッドロングエコを使った杉板DIY塗装の手順

「岩室の平屋」は、設計者である私の自邸です。いつもは設計者として現場に関わるのですが、今回は立場を変え、住まい手の立場で記事を書いてみました。DIYをやりたいと考えている方の手助けに少しでもなれば幸いです。

建物の外壁に張る杉板の塗装、通常は塗装職人さんが行うのですが、今回は自分でDIY塗装をしてみました。いつもは設計者として、お客さんのDIY塗装のアドバイスや助っ人をしているのですが、自分が主役となってDIYを行うのは、今回がはじめて。

せっかくの機会ですので、DIYの塗装の手順や掛かった費用を紹介したいと思います。

 

杉板DIY塗装に選んだ自然塗料「ウッドロングエコ」

今回使用した塗料は、天然防腐塗料「ウッドロングエコ」。木の表面に被膜を作らず、成分が木へ浸透し、防腐効果を発揮する塗料です。

外壁に木材を採用する場合は、耐候性やメンテナンス性が重視されるため、一度塗ったらメンテナンスがいらなくなるのは大きな利点。人体に害のない自然素材を原料にしているので、外壁を木で仕上げるエコなスタンスと、とてもマッチします。

ウッドロングエコは、緑色の粉末と水道水を混ぜるだけで作れるので、初心者でも簡単に扱えます。塗装に使ったハケやバケツなどの道具は水道水で洗い流せる点でも、取り扱いが簡単です。

今回は、桶を作って塗料に杉板を漬けながら塗る「どぶ漬け」の方法をとりました。以前、ハケ塗りをしたことがあるのですが、塗装の終わった板を後日みると塗り残し部分が結構あり、最終的には3度塗りまで再塗装をおこなった経験がありました。(木の表面に撥水する部分があると、塗料がうまく材に浸透しなくなるようです。)ハケで3度塗りをする手間を考えると、どぶ漬けを行う方が効率が良いと判断しました。またハケ塗りは、塗っている最中に塗料がぽたぽたと床に垂れてしまい、塗料がだいぶ無駄になっているのではないかと考えたためです。

「ウッドロングエコ」をどぶ漬けする

はじめに塗装の前に塗料を漬け込む桶づくりからスタートします。用意した材料は、以下。

・ブルーシート(長さ5.4以上)×1枚(水漏れ防止のため、厚手タイプがおすすめ)
・桟木(さんぎ:3cm×3cm程度の細長い角棒状の木材)長さ4m×6本程度
・貫板(ぬきいた:幅9cm×厚1.5cm程度の板材)長さ4m×4本程度
・えんぴつ
・のこぎり
・65mmビス(材料固定用)
・充電ドライバー(ビス止め工具)

まずは、桟木と貫板をのこぎりで必要な長さに切り、ビスで固定して桶の外形フレームを作ります。

参考までに、今回のフレームのサイズは、深さ30cm×幅20cm×長さ4.5m程度としました。桟木などは通常、長さ4mで販売されているので2本繋いで4.5mの長さにしています。(塗装する外壁材の寸法によって調整してください。)底に板を貼れば更に完璧ですが、今回は手間を省いて、底板を留めつけず、底に板を敷くだけにしています。

完成したフレームの上に、ブルーシートを被せ、塗料を溜める桶とします。塗料の液漏れ防止のため、ブルーシートは2つに折って2重にしておくのがベターです。

また塗装作業は、地面の上に桶を置いておこなってもよいのですが、作業時に腰に負担がかかるので、やはり台の上に置いて作業した方がおススメです。(今回は大工さんの作業用の台を借りました)

ここまで整えば、後は塗料を作り、桶の中へ入れて塗っていくだけです。
塗装のために用意した道具は、以下。

・塗装用手ぬぐいタオル、または、雑巾などの布
・バケツ(10L程度、水の量を測れるとベスト)
・ゴム手袋

どぶ漬け桶に塗料(ウッドロングエコを水道水で溶かした塗料)を入れます。塗料を満たした桶の中に、塗装する板材を漬け、表面を布で擦ります。

木の節や脂分の多い部分は水分を弾きますので、布で擦ってやって、塗料を材料へ浸透させていきます。板をゴシゴシとぞうきんで水洗いするイメージです。

板の側面や端部は、塗り残しがちな部分ですので、特に入念に。表に続いて、裏面も同様に。(表だけ塗装とする場合は、片面だけでOKです)塗り終わったら、よく水を切って、立てかけて乾燥させます。後は、根気よく繰り返すだけ、です。

塗装作業動画はこちら↓

DIY塗装にかかった作業時間

今回、塗装した板の枚数は200枚でした。板を運ぶ人、塗装する人と、作業を分担して2人ががり作業して、1時間に大体20枚程度のペースで塗れました。朝9時からスタートして昼休憩をはさんで15時まで作業すると、一日に塗れる枚数は100枚。

計算通り、2人で作業して、2日間で板200枚のDIY塗装が完了しました。平屋ですので外壁面積が少なく、この程度の板の枚数で済んでいますが、2階建ての家であれば、倍の板枚数、倍の塗装時間がかかると思ってください。

なお今回は2人で作業をしましたが、もっと人手があって、板を運ぶ人、塗装する人、立てかけて乾燥させる人、と作業分担をすればもっと効率よく作業が進むはずです。テンポの良い音楽でもかけながら、リズムよく作業を進めてください。

「ウッドロングエコ」の塗装後の杉板の表情

写真は、手前から、塗装前、塗装直後、塗装して数時間後の杉板の表情。肌色だった杉材が、落ち着いたグレー色に変化しているのが分かります。

塗装直後よりも時間が経つほど、塗料が木へ浸透・反応し、更に落ち着いた色目になってくるはずです。いかにも着色した木の色でなく、シルバーグレイの木の自然な風合いを求めるのであれば、この塗料はおススメです。

杉板DIY塗装にかかった費用

参考までに、どぶ漬け両面塗りにした場合の塗装費用を計算してみます。

ウッドロングエコ100gの塗料を使って、長さ4m×幅15cm×厚15mmの板が約80枚分、両面を塗れました。両面の塗装面積を計算すると約106㎡。塗料の購入費が約2万円ですので、塗料費20,000円÷106㎡=188.6円/㎡となります。カタログには100gの塗料、刷毛2回塗りで約70~90㎡塗装可能と表示があるので、両面106㎡塗れたとすると、カタログ値よりも約15%増しの面積が塗装できたことになり、かなり効率よく塗れたことになります。

今回塗装した杉材は、表面仕上げが荒木だったため、削った後の木くずや木粉が表面についていました。その粉を塗装をする前に乾いたぞうきんで拭き取って落としたのが功を奏したのかもしれません。また当日は気温が低めで、天気は雨模様だったため、塗料の蒸発量が少ないかったことも影響しているのかもしれません。

塗装屋さんにお願いした場合の塗装費用と比較してみます。見積もり時の塗装工事は、片面塗り112㎡×1,800円/㎡=201,600円(税抜き)→消費税込み221,760円(塗装手間+塗料代)でした。この金額は片面塗りですので、今回のように両面塗りの場合、倍の443,520円掛かることになります。

今回、実際に掛かった費用は、塗料代だけですと20,000円×3袋=60,000円。その他の材料費を含めても、7万円弱となります。つまり、DIY工事を行うことで、373,520円のコストダウンになった計算になります。この計算には自分の人件費(自分の働いた時間)を計上していないので、そのままの金額が全部浮いた!とはなりませんが、かなり大きな金額を抑えることができたことになります。

建設現場は、プロの職人さんが関わっているので、素人では建設工事に参加しにくい印象があります。しかし、この外壁杉板DIY塗装は、他の工事工程とは切り離されていますし、やる気さえあれば比較的に簡単にできる作業です。自分で手をかけた家は、きっと満足感が違うはず。家づくりに参加したいと思う方は、ぜひ試してみると良いと思います。

「岩室の平屋」合板パネルによる耐震工法

「岩室の平屋」建て方に続いて、現在、外壁に下地合板を貼る工事が進んでます。なぜ外壁に合板を貼るかというと、建物に耐震力を持たせるためです。今回の建物は、柱・梁を組んで作る在来木造と呼ばれる昔ながらの木造工法を採用していのですが、「筋交い」だけでなく、外壁に「合板パネル」を貼る事で、耐震力を持たせています。最近では合板パネルの種類にも、各メーカーとも様々な製品が出てきていますが、施工費を考慮し、もっとも価格の安いラーチ合板を採用しました。(写真で茶色に見えている壁に張られた合板)

合板パネルで耐震力を持たせる工法といえば、2×4(ツーバイフォー)工法が知られていますが、今回採用した工法は、ツーバイフォー工法の良いところを在来木造に取り入れた、良いとこどりのハイブリッドな工法となっています。線で支える筋交いに比べて、面で支える合板パネルは、建物に掛かる地震力を分散させて伝えることができ、強い揺れにも粘り強く対抗できる利点があります。

写真に見えている斜めにかかっている部材が「筋交い」です。どしんっといった急激な地震力が筋交いに加わると、その力は筋交いに集中的に加わり、筋交いが抵抗できずに折れてしまうケースが阪神大震災などの大地震で多く見られました。しかし、今回の建物には筋交いを併用しています。なぜわざわざそのような地震に弱い部材を採用するのかというと、コストを抑えつつ、建物の耐震バランスを取るため。昔から使われてる筋交いは工法も比較的簡易で、合板パネルを貼るよりもコストを抑えることができるので。

基本的に合板パネルは、外壁に張られますが、外壁にはいくつもの窓が設けられており、場所によっては合板を貼れない個所がでてきます。合板が貼れない部分があると、建物の重心が偏り、その部分に揺れが集中してしまいます。一般的に住宅は、採光のために南側に大きな窓が設けられることが多いので、南側の耐震性が弱くなる傾向があります。そのような場所に補完的に筋交いを設け、全体のバランスをとっているのです。考え方としては、メインで外壁の合板パネルで力を支え、サブで筋交いを使っているイメージです。

とは言え、建物に加わった地震力は単純に合板パネルだけでもっている訳ではありません。実際には、柱や梁などの線材を介して地震力を基礎へと伝えていくため、柱・梁の接合部分の取合いや金物の選定がきちんとしていなければ、地震に耐えることができません。そのため、接合金物の許容耐力や留付け釘の種類や間隔などを、現場で一つ一つ間違いが無いか確認していくことが重要です。耐震の合板は貼ってあるけど、実際には力が伝わってない、では意味がありませんので。

「岩室の平屋」丸太はつり機仕上げ

「岩室の平屋」根曲がり丸太から太鼓状に加工した棟梁。大工さんと加工方法について打合せをして、決定した「丸太はつり仕上げ」。(「斫り=はつり」とは、ノミなどで表面を削り取ることを言います。)現場に組み込まれた梁材と、初めて対面しました。

太鼓状に挽いてもらった梁の側面は、帯鋸(おびのこ=バンドソー)の目が残るよう、敢えて仕上げはせず、加工したままの、荒々しさを残しました。根の部分が曲がった梁材は、存在感が強く、上品に仕上げてしまっては、その木の存在感とちぐはぐになってしまいます。杉皮のついていた丸太表面は、その曲がりなりに丸太はつり機で表面を削り落としてもらいました。丸太はつり機で仕上げた表面は、小さなノミで斫ったような、独特の表情をしています。

太い部分で梁成約70センチ。端正な空間の中に、まるで壁から梁材が生えているような、とても面白い表現になりました。

ちなみに、隣に並んだもう一本の梁は、「手斧(ちょうな)」で仕上げてもらいました(↓下の写真参照)。機械で仕上げた表情とは異なり、一か所一か所が深く削り取られ、ファイヤーパターンのようなメラメラとした杢目が表れています。ちょうなの向きを変えることで、削り取られる向きが変わり、浮き出す杢目が変わってくるようです。木目金という鎚起銅器の技法がありますが、そう!まさに木目、と改めて納得してしまいました。

数年前にも、仕上げにちょうな仕上げを採用した事があるのですが、ここ数年で、手斧(ちょうな)を使える大工さんは、大分減ってしまいました。このような面白い表現が、いつかできなくなってしまうと思うと、寂しさを感じます。

「岩室の平屋」建て方工事

「岩室の平屋」トラックで現場に運ばれた柱・梁材を、クレーンで一本一本吊り上げ、柱梁を組み上げていきます。この作業の事を「建て方(たてかた)」工事と呼びます。今まで基礎しか無かった現場に、ある日、急に建物が立ち上がってくるという、建設工事の中でも最もドラマチックな瞬間です。大工さん達は、梁の上をひょひょいと身軽に歩き周り、あっという間に建物の形が立ち現れていきます。

今まで各加工場や作業所で加工していた材料が、初めて現場に集合し、図面に従って、順番に組み上げられていきます。朝から始まった建て方作業、夕方には屋根下地までが組み上がり、無事に「上棟(じょうとう)」を迎えました。(上棟とは、一番高い所にある棟梁が取り付き、建物の骨組みが組み上がる事を言います)

気温36度。暑い中の作業、お疲れ様でした。きっと今夜はビールがおいしいことでしょう。祝、上棟。

「岩室の平屋」基礎工事完了

「岩室の平屋」基礎工事が完了しました。今回、(床裏断熱ではなく)基礎断熱を採用したので、基礎の側面には、断熱スタイロフォームが取り付けられています。写真で見えている水色ボードが断熱材です。

基礎コンクリート自体を蓄熱槽として利用するかどうかで、基礎の内側・外側、どちら側に断熱を行うかが決まります。蓄熱利用とは、エアコンなどで暖めた(冷やした)熱を室内空気だけでなく、蓄熱量の大きなコンクリートに蓄えておく方法。暖まった(冷えた)コンクリート蓄熱槽は、エアコンを止めた後でも、持続して床下空気を暖める(冷やす)ことができ、年間の冷暖房費を抑えることができます。蓄熱槽の輻射熱効果をさらに考慮するならば、数値以上に効果が高いのではないかと予想しています。

今回は建物の規模が小さく、建物全体の気積も小さいので、基礎立上り部は蓄熱槽として使わず、床下の防湿コンクリートのみ、蓄熱槽として利用する計画としました。

基礎打設後

基礎からは、ブルーとピンクの管がぴょこぴょこと生えているのが見えますが、この管が設備の給水・給湯管です。ご想像の通り、ブルーが給水管、ピンクが温水管となります。

設備配管工事が行われるのは、まだまだ先ですが、基礎工事の段階で、どこからどのルートで設備配管をしていくのか、事前に検討をしておく必要があります。後になって配管が通らない、なんて事のないように。

「岩室の平屋」太鼓梁材の仕上げ方法

太鼓梁

「岩室の平屋」先日、丸太から製材し、太鼓状に加工してもらった梁材。乾燥ボイラーから梁材が出てきたと連絡を受け、状況を確認をしてきました。(おおよそ1週間程度×24時間、ボイラー釜に入れて乾燥を行ったとのことでした。)

今回の丸太材は、伐採してから数年間、そのまま屋外に放置していたので、自然と湿気が抜け、そのままでもじゅうぶん乾燥していたのですが、丸太の中に入っている虫を殺すためと、割れや狂いを低減するため、念には念を入れてボイラー乾燥を行いました。ボイラーから出てきた直後の梁材に触れると、暖かく熱を持っているのが分かります。梁の表情は、ボイラーに入れる前に比べ、やや茶色の色目が増し、以前よりも引き締まった印象です。

梁材を前に大工さんと次の工程、仕上げ方法についての打合せ。全体に曲がりがあり、材寸法もかなり大きな梁材ですので、できる限り、この材の存在感をそのまま生かしたい、と設計者の意図を伝えます。

表面の仕上げが繊細すぎては、この材の存在感を殺してしまうし、とはいえ、あまりにも丸太感を出してしまうと、野暮ったくなってしまうし。。。そこで、仕上げイメージを伝えるため、ネット上の画像をこんなラフな感じ、と大工さんに見せると。

丸太はつり機

ああ、それならと、箱から出してきたのは「丸太はつり機」。掃除機の吸い込み口のような部分に、回転するローター刃が組み込まれていて、丸太の表面を削り取っていく加工道具。私は初めてみましたが、丸太の樹皮の部分を剥がしていくための道具だそうです。ローターのアタッチメントを変えることでさまざまな削り方ができるとのこと。この道具であれば、梁の曲がり部分も曲がりに沿って、上手く削り取っていけそう。

といった流れで、太鼓梁の下側の表面仕上げは「丸太はつり機仕上げ」に決定。側面の製材機でカットした断面には、製材機のノコ目(歯の跡)が残っていたため、そのラフな表情を残すため、仕上げは無しで。果たしてどのような表情に仕上がっていくのか、はつり機の仕上がりが想像できないだけに、とても楽しみです。

仕上がった後日の表情は、こちらの記事で。


柱・梁材とは別に屋根を支える垂木(たるき)部材の加工は、加工形状が複雑なため、大工さんが加工場で手作業にて加工中。屋根勾配に沿って垂木をかけるため、斜めの角度で梁と取合うため。加工形状の形定規を薄べニアで作って、その定規を使って垂木を一本づつ、丸ノコで加工していきます。

とにかく作業場が暑い!ということを除けば、こちらの加工は問題なく、進んでいる模様。ここまでくれば後は、現場での建て方作業を待つだけです。

「岩室の平屋」軒先長さの検討

「岩室の平屋」スタディ模型を使って、軒先長さを検討中です。「岩室の平屋」は、真南の面をガラスの大開口という構成にしています。これだけの面に真夏の日が当たれば、かなりの日射熱が室内に入り込んでしまいますので、真夏の日差しを遮る庇を設けています。逆に、冬場であれば、できる限り日差しを室内に取り込んで、室内を暖めたい、と夏と冬では、日差しを遮る条件が異なります。

南側から差し込む日差しは、夏と冬では、差し込んでくる太陽高度が大きく異なるので、軒の長さをうまくコントロールすることで、夏には陽を遮り、冬には陽を取り込むという調整ができるようになります。できるだけ空調機などの機械の力に頼らず、自然の力を使ったパッシブ(受動的)な室内環境を実現しようという考え方です。

南側に面したガラス窓の高さと軒先の長さから算出すると、日差しの角度が約64度を超えれば、室内に日差しが入らないという事になります。
新潟の太陽高度から算出してみると、
6月中旬~7月中旬は、午前10時から13:00頃まで、
8月上旬から下旬は、午前11時から12:30頃まで、昼の前後に掛けては陽差しを完全に遮ることができる事が分かります。

逆に、10月から5月頃までは、室内へ一日を通して日差しを取り込む事ができるという事になります。
特に寒い12月頃の太陽高度を見てみると昼くらいに29度ですので、かなり室内の奥にまで陽が差し込む計算になります。(天気が晴れればですが)

日差しを遮りたい期間を考慮すると、もう少し軒先を長くしても良いかな、という感じですが、今回、窓際には障子戸を設けますので、ある程度の陽差しのカットは障子戸でも調整できるだろと考えて、庇長さ:窓高さ=1:1.8という比率で設定しました。

寒い地域であれば、もっと軒を短くして日射熱を取り込む方が有利でしょうし、暑い地域ではもっと軒を伸ばして遮る方が有利でしょうし、冬場に太陽が出る日数が多い・少ないで、そのバランスは変わってきます。軒の長さは、建物が建つ地域の気候特性によって異なりますので、いくつが最も適しているかは、一概に言い切ることはできず、気候条件を判断した上で決定していく必要があります。

軒先長さ確認

「岩室の平屋」施工図チェック

「岩室の平屋」柱・梁の加工作業を前に、工務店より施工図面が送られてきました。設計図でも架構図面を描いてあるのですが、加工を行う工務店や加工業者さんは、それとは別に、実際にどのように加工を行うかを検討するため、加工図(施工図)を作成します。

設計者は、作成された加工(施工)図を、設計図に取らし合わせ、設計図と異なる点は無いか、組み上がった際に見え方が変でないか、接合強度に問題ないか、金物や接合部が隠れているか、などなど、様々な観点から施工図をチェックしていきます。

設計図面はあくまで、どのように作りたいか、どのように表現したいのか、を施工側へ伝える手段です。とは言え、2次元情報の図面だけでは、伝え漏れてしまう設計側の意図もあります。それらの漏れをできる限り減らすために、施工図のやり取りや打合せで互いの意図を確認しあう必要があります。

施工図に赤ペンでチェック。変更点したい個所には、スケッチなども書き込んで。できるだけ分かりやすく、意図を伝える事が大切です。

「岩室の平屋」杉丸太を製材して太鼓梁に

「岩室の平屋」昨日、購入した曲がり杉丸太。製材加工したとの連絡を受け、さっそく現物確認してきました。上の写真は、丸太の断面部分に青いチョークで加工指示の線を書き込んでいる様子。どう加工をするか検討することを、木取り(きどり)と呼びます。ここでは丸太の両側を落とし、太鼓状の梁に加工するように指示を書き込んでいます。

丸太の断面を見ながら話した際、製材所の職人さんには、年輪の中央付近に玉割れ(たまわれ:中心付近の年輪に沿った丸いひび割れ)があるので、製材してみたらひびが入っているかもしれないと脅されていたのですが、製材後の状況をみる限り、ひび割れは大きくなく、問題ない範囲ということで、ほっとひと安心。

杉丸太製材

左手の材が棟梁(むねはり)。右手の材はもう一本の表しになる梁材。材の近くにいるだけで、杉の良い香りが漂ってきます。右手の曲がり丸太かた挽いた梁と左手の真っすぐな丸太から引いた梁では、まったく木目の表情が異なることが分かります。製材後の切断面をみると、左手の曲がり丸太から挽いた棟梁の方は、杢目がくねくねと面白い表情で表れています。曲がり丸太の方は、年輪の数を数えてみると、ざっと100本以上、つまり、100年以上の樹齢の杉の大木ということが分かります。長い年月を生きてきた樹木だけに、通常の角材とは違い、木自体に存在感があります。

昔であれば、丸太から製材し、柱梁を作るのが通常だったかもしれませんが、時間や手間が掛かる事から、現在ではほとんどそのような事は行われていません。丸太から選ぶことは今となっては、とても贅沢な試みなのかもしれません。

一般流通材ですと、癖のない、無個性な表情の材しか手に入らないのですが、(その均一性が製品保証の点からも利点なのですが)もし面白い表情の材をお探しであれば、個性的な丸太を探して製材してもらうという選択肢もありかもしれません。その分、時間も、手間も(つまり、予算は)かかりますが、掛けた以上のモノが得られる可能性があります。

製材した梁は、一部に虫の入った跡が見られたため、念には念を入れ、この後、ボイラー乾燥を行うことにしました。約10日間、ボイラー釜にいれて強制的に乾燥を掛けます。ボイラー乾燥をかけることで、木の中に入っている虫を燻し出すそうです。といっても、ボイラーだけでは虫を完全に駆除することは難しいらしいのですが。ボイラーから出てきたら次は、いよいよ仕上げ加工へと進んでいきます。丸太→製材→ボイラー乾燥→加工と、梁材になるまでにいくつもの工程が必要になります。

「岩室の平屋」棟梁の丸太材を購入する

「丸太を買う」初めての経験をしてきました。長いこと設計を仕事にしてきましたが、丸太を買ったのは実は初めて。今回は、その丸太を買った話です。通常、家を建てるのであれば、製材された後の柱・梁材を買うのであって、最近では丸太から買って製材することは見かけなくなりました。

「岩室の平屋」の屋根形状は、切妻形(家の中央部が高くなっている屋根形状)となっており、屋根の一番高い場所に棟梁(むなはり・むねはり)と呼ばれる梁が置かれます。この棟梁には構造的に大きな力が掛かるため、大きな材寸法が必要になります。昔の建物であれば、大黒柱と同様、棟梁には特徴のある材を使い、象徴性を持たせていました。

文字通り、建物の骨格を支えている大事な梁ですので、存在感ある梁として室内に表すことで、安心感を与える空間を作り出せないかと。

そんな考えを施工打合せの際に話していたところ、それなら建て方までの時間もないので直ぐに材料を探しに行こうとなり、そのまま製材所へ向かうことに。

丸太を探しに製材所へ

杉丸太

製材所内には山から切り出されたままの丸太が山になって積んでありました。その丸太の山の中から、存在感のある丸太を探していきます。ただ真っすぐで杢目の詰まった丸太材ならば、いくらでもあるのですが「個性的な」という条件で探すと、なかなか、見つかりません。あっちの山を覗いたり、こっちの山を覗いたり、探しまわっていると、積み上げた丸太の奥に少し根元が曲がった杉丸太が。重機を使って奥から掘り出してもらいます。

長さ6m、太い方で丸太直径80センチと太さがあり、存在感は十分です。真ん中付近が弓なりに反りかえっています。(曲がり丸太と、呼ぶそうです。)曲がった杉丸太は、製材する際に木どりが悪く(つまり真っすぐな柱や梁材を効率よく丸太から取れない)、形のくせが強くて一般流通させにくいので、現在では市場価値があまり良くないそうです。しかし今回探している個性的な梁材としては、その特徴的ある形は、とても魅力的です。

丸太の見方(見立て方)を教えてもらう

最初にも書きましたが、長い間、建築業に関わっていますが、丸太材を買うというのは実は初めてのこと。そこで製材所の方に、丸太の見方を教えてもらいました。大事なのは丸太の切断面をよく観察すること、だそうです。切断面から判断したところ、この曲がり丸太は年輪は詰まっているものの、アテが強く、身割れ(玉割れ?)している、との事でした。

「アテが強い」というのは、傾斜地などで育ったため、ねじれた力が掛かり、木目に偏りがあるという事。(つまり、ねじれやすく、割れやすい)逆を返せば、単調でない、特徴的な杢目が入っている可能性があるという事でもあります。身割れ(みわれ)というのは、ある年に台風や土崩れなどで強い外力が加わり、節の周りにひび割れが起きている状態を、そう呼ぶようです。身割れしてる丸太は、製材時や乾燥時にひび割れが入る可能性が高いとのことでした。今回は、構造計算で必要な寸法を上回る断面寸法があるため、多少のひび割れは問題なしと判断しました。

長さ、径、杢目とも問題なし。個性ある面白い梁材が取れそうなので、この杉丸太に決定、購入しました。まずは丸太の3面を挽き、太鼓状に製材加工をしてもらうことになりました。

丸太一本の購入価格

参考までに、この丸太材をいくらで買ったかというと、1本で約3万円強でした。(加工費や送料などの手間は別途掛かります。)製材所で直接購入したので、かなり安く手に入れられた方だと思います。通常の一般的な梁材であれば、約1.5~2万円で手に入るので、倍かかったことになります。それでも、このような個性的な表情のある材を手に入れることができたことを考えれば、その差額はけして高くないと思います。ただ、それを探すために自分の時間を使う必要があるのですが。

「岩室の平屋」夏場にコンクリート打設する際の注意点

基礎コンクリート打設

「岩室の平屋」現在、基礎工事が進行中です。基礎が配置される地面を溝状に掘り、型枠を設置し、鉄筋を配筋し、コンクリートを打ち込み基礎を作っていきます。生コン車で運ばれ、現場に打設された直後のコンクリートは、粘土のようにドロドロですが、(その日の気温や天気にもよりますが)午前中に打ったコンクリートは、夕方くらいには人が乗れる程度の硬さにまで固まります。

コンクリートは、水とセメントが反応することで硬化するのですが、その硬化反応は温度が上がるほど活性化します。今年の夏は、気温35℃を超える猛暑日が連日続きましたが、実はこの高気温、コンクリートを打つのにあまり良い条件ではありません。

早く反応して固まるのだから良いのでは?と考えるかもしれませんが、硬化時間が短いと、コンクリ表面に急激な収縮によるひびが入ってしまいます。表面のヘアークラック(髪の毛の巾のひび)程度であれば、構造強度上は大きな問題ではないのですが、コンクリートの表面をそのまま仕上げとする、打ち放し仕上げとする場合には特に注意が必要です。

可能ならば、猛暑日の炎天下でコンクリを打設することは避けたいのですが、連日猛暑日が続く今年の夏のような天気では、気温が落ちるのを待っていたら工程が進まず、そのまま秋になってしまいかねません。そのため、猛暑日でもコンクリ打ちを行わなければいけないケースも出てきます。

コンクリートは固まる時に、硬化熱を発生するため、打設後の温度管理が特に重要になります。気温の高い夏場にコンクリートを打たなければいけない時には、強い日が当たるようであればビニールシートで表面を覆って日影を作る、打設後にコンクリに打ち水をして表面温度を下げてやる、早朝や夕方の気温の低い時間帯に打設するなど、温度を上げないための対策をする必要があります。

今回の現場では、コンクリートを打ち終わった後に雨が降り、コンクリートにとって恵みの雨となりました。念のため、雨の日にコンクリートを打っても問題はないのか、といった質問に対する考え方を示しておきます。打設中に大雨が降ってしまうと、コンクリート中に多量に水が混ざり、コンクリート強度が低下し、望ましくありません。しかし夏場で、打設後であれば(表面を洗い流す程度でコンクリート内に水が混じらないのであれば)、雨が降って硬化温度を下げてくれるのであれば良い方に働いていると、考えることもできます。

夏場のコンクリート打設の注意点について書きましたが、冬場のコンクリート打設の注意点についても、また機会を作って書きたいと思います。