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「蓮野の平屋」が「住まいネット新潟VOL.30」に掲載されました

9月30日発売の「住まいネット新潟VOL.30」に「蓮野の平屋」が掲載されています。「10年後の住まい」と題し、取材後10年以上たった家を再度訪れ、どのような暮らしをしているか、どのように暮らしが変化しているのかを再び取材・撮影した特集。

「蓮野の平屋」は2008年竣工。今年が2020年ですので、竣工から約12年経ったことになります。建築の設計は、最初の相談から家が出来あがるまで丸1年以上の時間がかかります。設計に集中して取りかかっていると、あっという間に月日は経ち、気がつけば12年もの月日が経っていたようです。まるで浦島太郎です。

7年ぶりの取材(掲載時の取材は2013年ですので)に立ち合い、当時の思い出を施主さん家族と話していると、その時考えていたことやその当時の自分の気持ちを思い出してきました。「空間の中にどんなモノが置かれても、空間内でどんな暮らしをしたとしても、ぶれない強度のある空間を作ること」その当時考えていたのは、包容力のある空間を作ることでした。ちょっと雰囲気の異なるものを置いただけで、ぶれてしまう繊細な空間でなく、どんなものでも受け入れてしまう包容力のある、骨太の空間。

出来上がった紙面を見ると、少し感じは異なるものの、竣工当時の空間の雰囲気そのまま、何も変わってないように感じられます。少しは自分にも包容力のある空間を作れたのだとすれば、うれしいのですが。ぜひ紙面を手にとって見比べてみてください。

リビング風景。窓の外。隣地の竹林を借景として取り込んでいます。高さが抑えられたハンス・ウェグナーのソファーとテーブルが置かれ、重心の低い落ち着いた空間となっています。ペンダント照明の明るさが抑え目なのも、落ち着き感に貢献しています。和とモダンデザインが融合した、家具インテリアは、お住まいの方が自分で選んだもの。さすが、センスあります。

リビングと連続するデッキテラス。リビング床とデッキ床レベルを揃えることで外部への連続性が生まれ、部屋の広さの割に広がりを感じる空間となっています。竣工当時と比べるとフローリングの色は、だいぶ飴色に変化しています。竹林の葉を透過した陽の光がちらちらと揺れながら室内に差し込んできます。

ダイニングテーブル横のスペースは、子供たちが作った作品の展示エリアに。造り付けの収納カウンターは、ダイニングテーブルと高さを揃え、モノが直ぐに手に取れるように。写真や習字、ピアノなど何でも並べて、にぎやかな雰囲気に。壁付けスポットライトをベース照明として使い、ポイントとなる個所にはペンダント照明を吊るし、空間に明暗を作り出すことを意識して照明計画しています。

竹林に面した側には昔ながらの縁側を設けて、ちょっと懐かしい空間に。右手の窓の外には雑木林、左手の障子戸の奥は畳スペース。縁側に腰掛けてぼーっとするのも良し、畳にごろんと寝転ぶのも良し。畳に腰掛けて外を見たときの視線を重視して、あえて天井高さは低めにしています。屋根を支える構造部材の垂木(たるき)は、そのまま表しに。規則正しく連続する垂木が空間にリズムを与えています。

縁側を外から見る。窓の外には雑木林が広がっています。この立地の敷地を探すために、施主さんはずいぶんと土地探しをしたそうです。確かにこんな条件の土地は、そうそう見つかりませんよね。隣地が雑木林という敷地の特徴を最大限生かすため、設計時には、窓の配置や建物の配置を何度も検討しました。

廊下コーナーの展示スペース。壁から分厚い木の棚板を飛び出させ、スポットライトを当てています。明るい場所だけでなく、暗い場所も意識的につくり、明暗の変化がある空間としました。明・暗だけでなく、天井の低い場所・高い場所、開放的な場所・閉鎖的な場所、と場所ごとに空間の質を変えることで、小さいながらも変化に富んだ家となってます。

取材時に撮らせてもらった写真を解説と共に載せてみました。雑誌の掲載記事と見比べながら、お楽しみください。

屋根端部をすっきりと納める方法

「岩室の平屋」現場では現在、屋根工事が行われています。今回の屋根は、ガルバリウム鋼板葺きとしているのですが、ガルバリウム屋根葺きと一言で言っても実は、さまざまな葺き方があります。瓦棒葺き、縦ハゼ葺き、横葺き、と、その他多数。近年は、現場での施工手間を減らすため、パチパチと留め付けるだけで簡単に施工が完了するタイプの屋根葺き工法もあって、施工時間の短縮化、施工手間の軽減が大幅に図られています。(同時に防水性能の向上も年々、図られているようです。)

ガルバリウム鋼板自体も年々、性能が上がり、さび保証20年以上の高耐候製品や遮熱性能を持つ製品も現れてきています。工事コストと屋根防水性能を考えると、他に選択肢がないくらい、ガルバリウム屋根が国内の屋根業界を席巻しているのが現在の状況です。

今回、屋根葺きに採用したのは、昔ながらの手で締め付け加工を行う「縦ハゼ葺き工法」。なぜわざわざ、と思われるかもしれませんが、敢えてこの方向を選択したのは、見た目がすっきりと美しく納まるから。

・軒先に雨どいを取り付けないので軒先が良く見える
・平屋で建物の高さが低く、軒先が近くに見える
・平屋の特徴である水平ラインを強調したい

これらの要素を考慮し、縦ハゼ葺きのハゼ部分を軒先端部でつぶしたシャープなデザインにしたい、と考えました。そんな細かい所まで、と思われるかもしれませんが、そのような小さな部分を積み重ねることで、最終的な建物の見え方が大きく変わってきます。上の写真は、屋根の端部納まり部分。屋根端部でハゼの立上り部分を折り曲げ処理し、水平ラインがくっきりと、すっきりとします。

上の写真は、縦ハゼを締め込んでいくための道具「ハンドロールシーマー」。

職人さんの話では、近年、簡易型のキャップ式施工方法が主流で、手加工をしたのは、数年ぶりとの事。施工方法が簡易化・効率化していく流れの中、このような手間の掛かる工法は、いつか姿を消していくのかもしれません。

隣り合った屋根材の立上り部分を専用の道具で掴んで折り曲げていきます。折り曲げることで屋根材同士が一体化し、継ぎ目のない一枚の屋根となります。端部は大きなペンチのような道具(通称「がちゃ」と呼ぶそうです。)を使ってがちゃ、がちゃと締めこんでいきます。長い召し合わせ部分は、ハンドロールシーマ―で、立上りに沿ってローラーでぐいぐいと押し込んで締めていきます。


設計者としては年々、工法の選択肢が減っていくのは非常に悩ましいことではあるのですが。デザイン上、選べるものが無くなっていくことですので。もしかすると数年後には、手で加工するこのような工法を現場で目にすることが無くなっているかもしれません。

 

ウッドロングエコを使った杉板DIY塗装の手順

「岩室の平屋」は、設計者である私の自邸です。いつもは設計者として現場に関わるのですが、今回は立場を変え、住まい手の立場で記事を書いてみました。DIYをやりたいと考えている方の手助けに少しでもなれば幸いです。

建物の外壁に張る杉板の塗装、通常は塗装職人さんが行うのですが、今回は自分でDIY塗装をしてみました。いつもは設計者として、お客さんのDIY塗装のアドバイスや助っ人をしているのですが、自分が主役となってDIYを行うのは、今回がはじめて。

せっかくの機会ですので、DIYの塗装の手順や掛かった費用を紹介したいと思います。

 

杉板DIY塗装に選んだ自然塗料「ウッドロングエコ」

今回使用した塗料は、天然防腐塗料「ウッドロングエコ」。木の表面に被膜を作らず、成分が木へ浸透し、防腐効果を発揮する塗料です。

外壁に木材を採用する場合は、耐候性やメンテナンス性が重視されるため、一度塗ったらメンテナンスがいらなくなるのは大きな利点。人体に害のない自然素材を原料にしているので、外壁を木で仕上げるエコなスタンスと、とてもマッチします。

ウッドロングエコは、緑色の粉末と水道水を混ぜるだけで作れるので、初心者でも簡単に扱えます。塗装に使ったハケやバケツなどの道具は水道水で洗い流せる点でも、取り扱いが簡単です。

今回は、桶を作って塗料に杉板を漬けながら塗る「どぶ漬け」の方法をとりました。以前、ハケ塗りをしたことがあるのですが、塗装の終わった板を後日みると塗り残し部分が結構あり、最終的には3度塗りまで再塗装をおこなった経験がありました。(木の表面に撥水する部分があると、塗料がうまく材に浸透しなくなるようです。)ハケで3度塗りをする手間を考えると、どぶ漬けを行う方が効率が良いと判断しました。またハケ塗りは、塗っている最中に塗料がぽたぽたと床に垂れてしまい、塗料がだいぶ無駄になっているのではないかと考えたためです。

「ウッドロングエコ」をどぶ漬けする

はじめに塗装の前に塗料を漬け込む桶づくりからスタートします。用意した材料は、以下。

・ブルーシート(長さ5.4以上)×1枚(水漏れ防止のため、厚手タイプがおすすめ)
・桟木(さんぎ:3cm×3cm程度の細長い角棒状の木材)長さ4m×6本程度
・貫板(ぬきいた:幅9cm×厚1.5cm程度の板材)長さ4m×4本程度
・えんぴつ
・のこぎり
・65mmビス(材料固定用)
・充電ドライバー(ビス止め工具)

まずは、桟木と貫板をのこぎりで必要な長さに切り、ビスで固定して桶の外形フレームを作ります。

参考までに、今回のフレームのサイズは、深さ30cm×幅20cm×長さ4.5m程度としました。桟木などは通常、長さ4mで販売されているので2本繋いで4.5mの長さにしています。(塗装する外壁材の寸法によって調整してください。)底に板を貼れば更に完璧ですが、今回は手間を省いて、底板を留めつけず、底に板を敷くだけにしています。

完成したフレームの上に、ブルーシートを被せ、塗料を溜める桶とします。塗料の液漏れ防止のため、ブルーシートは2つに折って2重にしておくのがベターです。

また塗装作業は、地面の上に桶を置いておこなってもよいのですが、作業時に腰に負担がかかるので、やはり台の上に置いて作業した方がおススメです。(今回は大工さんの作業用の台を借りました)

ここまで整えば、後は塗料を作り、桶の中へ入れて塗っていくだけです。
塗装のために用意した道具は、以下。

・塗装用手ぬぐいタオル、または、雑巾などの布
・バケツ(10L程度、水の量を測れるとベスト)
・ゴム手袋

どぶ漬け桶に塗料(ウッドロングエコを水道水で溶かした塗料)を入れます。塗料を満たした桶の中に、塗装する板材を漬け、表面を布で擦ります。

木の節や脂分の多い部分は水分を弾きますので、布で擦ってやって、塗料を材料へ浸透させていきます。板をゴシゴシとぞうきんで水洗いするイメージです。

板の側面や端部は、塗り残しがちな部分ですので、特に入念に。表に続いて、裏面も同様に。(表だけ塗装とする場合は、片面だけでOKです)塗り終わったら、よく水を切って、立てかけて乾燥させます。後は、根気よく繰り返すだけ、です。

塗装作業動画はこちら↓

DIY塗装にかかった作業時間

今回、塗装した板の枚数は200枚でした。板を運ぶ人、塗装する人と、作業を分担して2人ががり作業して、1時間に大体20枚程度のペースで塗れました。朝9時からスタートして昼休憩をはさんで15時まで作業すると、一日に塗れる枚数は100枚。

計算通り、2人で作業して、2日間で板200枚のDIY塗装が完了しました。平屋ですので外壁面積が少なく、この程度の板の枚数で済んでいますが、2階建ての家であれば、倍の板枚数、倍の塗装時間がかかると思ってください。

なお今回は2人で作業をしましたが、もっと人手があって、板を運ぶ人、塗装する人、立てかけて乾燥させる人、と作業分担をすればもっと効率よく作業が進むはずです。テンポの良い音楽でもかけながら、リズムよく作業を進めてください。

「ウッドロングエコ」の塗装後の杉板の表情

写真は、手前から、塗装前、塗装直後、塗装して数時間後の杉板の表情。肌色だった杉材が、落ち着いたグレー色に変化しているのが分かります。

塗装直後よりも時間が経つほど、塗料が木へ浸透・反応し、更に落ち着いた色目になってくるはずです。いかにも着色した木の色でなく、シルバーグレイの木の自然な風合いを求めるのであれば、この塗料はおススメです。

杉板DIY塗装にかかった費用

参考までに、どぶ漬け両面塗りにした場合の塗装費用を計算してみます。

ウッドロングエコ100gの塗料を使って、長さ4m×幅15cm×厚15mmの板が約80枚分、両面を塗れました。両面の塗装面積を計算すると約106㎡。塗料の購入費が約2万円ですので、塗料費20,000円÷106㎡=188.6円/㎡となります。カタログには100gの塗料、刷毛2回塗りで約70~90㎡塗装可能と表示があるので、両面106㎡塗れたとすると、カタログ値よりも約15%増しの面積が塗装できたことになり、かなり効率よく塗れたことになります。

今回塗装した杉材は、表面仕上げが荒木だったため、削った後の木くずや木粉が表面についていました。その粉を塗装をする前に乾いたぞうきんで拭き取って落としたのが功を奏したのかもしれません。また当日は気温が低めで、天気は雨模様だったため、塗料の蒸発量が少ないかったことも影響しているのかもしれません。

塗装屋さんにお願いした場合の塗装費用と比較してみます。見積もり時の塗装工事は、片面塗り112㎡×1,800円/㎡=201,600円(税抜き)→消費税込み221,760円(塗装手間+塗料代)でした。この金額は片面塗りですので、今回のように両面塗りの場合、倍の443,520円掛かることになります。

今回、実際に掛かった費用は、塗料代だけですと20,000円×3袋=60,000円。その他の材料費を含めても、7万円弱となります。つまり、DIY工事を行うことで、373,520円のコストダウンになった計算になります。この計算には自分の人件費(自分の働いた時間)を計上していないので、そのままの金額が全部浮いた!とはなりませんが、かなり大きな金額を抑えることができたことになります。

建設現場は、プロの職人さんが関わっているので、素人では建設工事に参加しにくい印象があります。しかし、この外壁杉板DIY塗装は、他の工事工程とは切り離されていますし、やる気さえあれば比較的に簡単にできる作業です。自分で手をかけた家は、きっと満足感が違うはず。家づくりに参加したいと思う方は、ぜひ試してみると良いと思います。

「上越滝寺の店舗併用住宅」地盤改良の工法について

「上越滝寺の店舗併用住宅」地盤調査を行った結果、軟弱地盤(沈下の可能性あり)との判定が出てしまいました。(実はもう少し良い結果が出るのではないかと、淡い期待を抱いていたのですが。。。)土地を購入する際に、ある程度の地盤強度が分かっていれば良いのですが、たいてい土地の購入時には、地盤調査をしてあることは無く、地盤強度が不明ということが大半です。予想していたよりも地盤が軟弱であれば、後々、地盤改良費用が増えてしまいますし、地盤改良費を多く見込みすぎては、借入額が増え、事業自体が成り立たなくなってしまいます。土地の購入時に、地盤改良予算をどこまで見込んでおくのか、毎回のことながら悩ましい問題です。

周辺の地盤調査データが得られれば、ベストではあるのですが、そう簡単にデータを得られることはないでしょう。もし近くで施工している現場があったらその物件が地盤改良を行ったかどうかを見て、地盤改良が必要かどうかのおおよその検討がつきます。また、もし聞けるのであれば、お隣さんに地盤改良を行ったかどうか、聞いてみるのも良いかもしれません。それらが叶わなければ、周辺の道路や塀にひび割れがあるかどうか、塀や電柱が傾いていないか、などの周辺情報から軟弱地盤かどうかを予測するしかありません。

地盤調査の結果を踏まえ、地盤改良を行うことにしました。今回、地盤改良に採用した工法は「環境パイルS工法」という、木杭による地盤改良工法。(写真に写っている鉄筋の下に埋まっている木が、改良杭です。)私の事務所では、近年、この改良方法を採用することが増えています。

「環境パイル工法」改良工事費用は、他の改良工法に比べて1~2割高めではあります。ただし、建物解体時のコストまで含めてトータルに考えると、コストメリットがあると判断しています。なぜなら、この木杭工法であれば、比較的簡易に杭を引き抜くことが可能だからです。つまり、杭の撤去費用が安い。セメントなどを使った改良方法ですと、杭打設時の工事費用は比較的安くできるのですが、解体しようとすると、解体費用が大きくかかってきます。(場合によっては、解体不能という場合もあります。)

新築の際に、そこまで考える方は少ないのかもしれませんが、もし仮に建物を解体し、最後に更地にして土地を売る場合、改良杭が撤去していなければ、土地の値段は下がってしまいます。(改良杭の撤去費分、土地代が下がってしまいます)ですので、建設~解体に至るまでをトータルに考えれば、全体費用が抑えられ、むしろ割安ではないかと。目先の建設費だけでなく、もっと長いスパンで考えていく事が必要です。

「岩室の平屋」合板パネルによる耐震工法

「岩室の平屋」建て方に続いて、現在、外壁に下地合板を貼る工事が進んでます。なぜ外壁に合板を貼るかというと、建物に耐震力を持たせるためです。今回の建物は、柱・梁を組んで作る在来木造と呼ばれる昔ながらの木造工法を採用していのですが、「筋交い」だけでなく、外壁に「合板パネル」を貼る事で、耐震力を持たせています。最近では合板パネルの種類にも、各メーカーとも様々な製品が出てきていますが、施工費を考慮し、もっとも価格の安いラーチ合板を採用しました。(写真で茶色に見えている壁に張られた合板)

合板パネルで耐震力を持たせる工法といえば、2×4(ツーバイフォー)工法が知られていますが、今回採用した工法は、ツーバイフォー工法の良いところを在来木造に取り入れた、良いとこどりのハイブリッドな工法となっています。線で支える筋交いに比べて、面で支える合板パネルは、建物に掛かる地震力を分散させて伝えることができ、強い揺れにも粘り強く対抗できる利点があります。

写真に見えている斜めにかかっている部材が「筋交い」です。どしんっといった急激な地震力が筋交いに加わると、その力は筋交いに集中的に加わり、筋交いが抵抗できずに折れてしまうケースが阪神大震災などの大地震で多く見られました。しかし、今回の建物には筋交いを併用しています。なぜわざわざそのような地震に弱い部材を採用するのかというと、コストを抑えつつ、建物の耐震バランスを取るため。昔から使われてる筋交いは工法も比較的簡易で、合板パネルを貼るよりもコストを抑えることができるので。

基本的に合板パネルは、外壁に張られますが、外壁にはいくつもの窓が設けられており、場所によっては合板を貼れない個所がでてきます。合板が貼れない部分があると、建物の重心が偏り、その部分に揺れが集中してしまいます。一般的に住宅は、採光のために南側に大きな窓が設けられることが多いので、南側の耐震性が弱くなる傾向があります。そのような場所に補完的に筋交いを設け、全体のバランスをとっているのです。考え方としては、メインで外壁の合板パネルで力を支え、サブで筋交いを使っているイメージです。

とは言え、建物に加わった地震力は単純に合板パネルだけでもっている訳ではありません。実際には、柱や梁などの線材を介して地震力を基礎へと伝えていくため、柱・梁の接合部分の取合いや金物の選定がきちんとしていなければ、地震に耐えることができません。そのため、接合金物の許容耐力や留付け釘の種類や間隔などを、現場で一つ一つ間違いが無いか確認していくことが重要です。耐震の合板は貼ってあるけど、実際には力が伝わってない、では意味がありませんので。

外壁杉板のウッドロングエコDIY塗装

「上越滝寺の店舗併用住宅」外壁材には、杉板張りを採用しています。木は自然素材であるため、無塗装のままでは雨や日差しに晒され、時と共に木の痛みが進行してしまいます。耐候性を持たせるため、木の表面には何らかの塗装を行う必要があります。

が、その外壁面の塗装、塗装屋さんに頼むとかなりの塗装費用が掛かってしまいます。そこで今回、外壁材を住まい手自身でDIY塗装してはどうかとなりまして。塗装費用の削減になりますし、今後の外壁メンテナンスも自分で行えるようになる利点があります。

外壁杉板のDIY塗装に選んだ塗料「ウッドロングエコ」

初心者にも塗れる木材塗料として選んだのは、自然防腐塗料「ウッドロングエコ」。粉末を水道水で溶かすだけで作れる塗料で、その液状の塗料に板を浸すだけと、誰でも簡単に塗れるのが選んだ理由。(塗装屋さんのような特殊な技術は必要ありません。)「エコ」の名の通り、酸化鉄、樹皮、ハーブなどの天然成分から作られた自然塗料で、天然成分が木材に浸透し、耐候性を上げる塗料です。人体に害がない上、環境に与えるインパクトも小さく、一度塗れば再塗装不要の優れた耐候性能を持っています。

ウッドロングエコ「どぶ漬け」塗装

今回は、ハケで塗る通常の塗装方法でなく、プールの中に塗料を貯め、その中へ外壁杉材を漬け、雑巾で表面を擦る、いわゆる「どぶ漬け」で塗装を行うことにしました。

以前、ハケ塗りで塗装したことがあるのですが、材の表面に水はじき部があると塗料が上手くのらず、何度も塗料を塗り重ねた経験がありました。その経験から、何度も塗り替える手間を考えると、塗料のプールに漬ける「どぶ漬け」方法が効率が良い、と考えました。(確実に塗料が浸透することで、木の耐候性も上がります。)ウッドロングエコは、水のようにさらっとした塗料なので、塗る、よりも、塗料水に漬ける、と言った方がイメージに近いかもしれません。

まず初めに、桟木(さんぎ:3cm×3cセ程度の細長い角棒状の木材)と合板で箱状の桶を大工さんに作ってもらい、その上にブルーシートを掛け、塗料を漬け込むプールを作りました。箱状の桶はDIYで自ら作っても良いのですが、加工する道具を持っていて、かつ、木工作業に慣れた人でないと、それなりに時間が掛かってしまいます。今回、大工さんにお願いしたら30分程度でちゃちゃっと作ってしまいましたので、自信の無い方は、大工さんに費用を払って、桶の製作をお願いするのが良いかもしれません。

杉板DIY塗装にかかる日数と削減できた費用

2階建ての建物の外壁面全面となると、外壁量もかなりの量になります。今回は、4mの杉材が340枚でした。1人が材料を運び+塗装が終わったら立てかけ、2人がプールの中で塗料を擦りこむ、と作業を分担しました。昼前から3人で作業して一日で約130枚の塗装が完了。作業時間にして、約5時間とすると、1時間当たり26枚ペース。午前中はプール作りで時間を要したものの、まだ半分まで達していません。

このままのペースで枚数340枚塗るとすると、340枚÷26枚/時間=13時間かかる計算になります。一日5時間作業して3日間、8時間作業して2日間かかることになります。まだまだ先は長いのですが、おおよそ段取りは把握できたので、後は淡々と根気よく塗るだけです。

参考までに、DIY塗装でなく、塗装屋さんに塗装工事をお願いした場合の費用を計算してみます。3人で13時間かかる計算ですので、一日8時間労働として全て塗り終わるまでには3人×2日=6人工(にんく:何人の職人手間がかかったかを数える単位)かかることになります。塗装屋さんの手間代が2万円/人とすると、2万×6人工=12万円。塗料代は別で計算しています。実際にはこの金額に道具代や材料代、会社経費、会社利益が割り増しになるので、少なくとも20万円くらいは削減できた計算になります。

ウッドロングエコ塗装後の杉板の色目

写真の手前は、塗装前の杉板。奥が塗装後の杉板。塗装して数分後には、みるみる緑掛かったグレー色になっていきます。とてもしっとりした色合いで、この杉板を貼れば、新築なのにまるで以前からそこにあったような落ち着いた佇まいになるのではないかと思います。この杉板が貼られた外壁が姿を現すのが楽しみです。

一日終わって、まだ作業はノルマの半分も進んでいません。また明日からは3人でなく、2人での作業になってきます。今日よりも作業効率は落ちるかと思いますが、施主さんのがんばりに期待するしかありません。無理をせず、お願いします。

後日談ですが、その後数えてみたら、塗装する枚数が340枚ではなく、385枚もあったそうで。全ての塗装作業が終わるまで丸4日掛かったそうです。大変お疲れさまでした。

「岩室の平屋」丸太はつり機仕上げ

「岩室の平屋」根曲がり丸太から太鼓状に加工した棟梁。大工さんと加工方法について打合せをして、決定した「丸太はつり仕上げ」。(「斫り=はつり」とは、ノミなどで表面を削り取ることを言います。)現場に組み込まれた梁材と、初めて対面しました。

太鼓状に挽いてもらった梁の側面は、帯鋸(おびのこ=バンドソー)の目が残るよう、敢えて仕上げはせず、加工したままの、荒々しさを残しました。根の部分が曲がった梁材は、存在感が強く、上品に仕上げてしまっては、その木の存在感とちぐはぐになってしまいます。杉皮のついていた丸太表面は、その曲がりなりに丸太はつり機で表面を削り落としてもらいました。丸太はつり機で仕上げた表面は、小さなノミで斫ったような、独特の表情をしています。

太い部分で梁成約70センチ。端正な空間の中に、まるで壁から梁材が生えているような、とても面白い表現になりました。

ちなみに、隣に並んだもう一本の梁は、「手斧(ちょうな)」で仕上げてもらいました(↓下の写真参照)。機械で仕上げた表情とは異なり、一か所一か所が深く削り取られ、ファイヤーパターンのようなメラメラとした杢目が表れています。ちょうなの向きを変えることで、削り取られる向きが変わり、浮き出す杢目が変わってくるようです。木目金という鎚起銅器の技法がありますが、そう!まさに木目、と改めて納得してしまいました。

数年前にも、仕上げにちょうな仕上げを採用した事があるのですが、ここ数年で、手斧(ちょうな)を使える大工さんは、大分減ってしまいました。このような面白い表現が、いつかできなくなってしまうと思うと、寂しさを感じます。

「岩室の平屋」建て方工事

「岩室の平屋」トラックで現場に運ばれた柱・梁材を、クレーンで一本一本吊り上げ、柱梁を組み上げていきます。この作業の事を「建て方(たてかた)」工事と呼びます。今まで基礎しか無かった現場に、ある日、急に建物が立ち上がってくるという、建設工事の中でも最もドラマチックな瞬間です。大工さん達は、梁の上をひょひょいと身軽に歩き周り、あっという間に建物の形が立ち現れていきます。

今まで各加工場や作業所で加工していた材料が、初めて現場に集合し、図面に従って、順番に組み上げられていきます。朝から始まった建て方作業、夕方には屋根下地までが組み上がり、無事に「上棟(じょうとう)」を迎えました。(上棟とは、一番高い所にある棟梁が取り付き、建物の骨組みが組み上がる事を言います)

気温36度。暑い中の作業、お疲れ様でした。きっと今夜はビールがおいしいことでしょう。祝、上棟。

「上越滝寺の店舗併用住宅」柱梁材の加工打合せ

「上越滝寺の店舗併用住宅」柱・梁材が加工場に搬入されました。この後、大工さんの手によって、接手部分の加工作業へと入っていきます。近年では、柱・梁材はPCでデータ入力し、機械で加工を行うプレカット工場で加工を行うが大半なのですが、今回、施工をお願いしている久保田建築では、大工技術向上のため、できる限り手で加工を行うようにしている、とのことでした。

大工さんと打合せをして、接手の位置、取付金物と許容耐力の確認、加工形状、各部納まりなど、一つ一つ漏れの無いように確認をしていきます。せっかく搬入した材料、間違えて加工しては無駄になってしまいますので。慎重には、慎重を重ねて。

柱梁材

「岩室の平屋」基礎工事完了

「岩室の平屋」基礎工事が完了しました。今回、(床裏断熱ではなく)基礎断熱を採用したので、基礎の側面には、断熱スタイロフォームが取り付けられています。写真で見えている水色ボードが断熱材です。

基礎コンクリート自体を蓄熱槽として利用するかどうかで、基礎の内側・外側、どちら側に断熱を行うかが決まります。蓄熱利用とは、エアコンなどで暖めた(冷やした)熱を室内空気だけでなく、蓄熱量の大きなコンクリートに蓄えておく方法。暖まった(冷えた)コンクリート蓄熱槽は、エアコンを止めた後でも、持続して床下空気を暖める(冷やす)ことができ、年間の冷暖房費を抑えることができます。蓄熱槽の輻射熱効果をさらに考慮するならば、数値以上に効果が高いのではないかと予想しています。

今回は建物の規模が小さく、建物全体の気積も小さいので、基礎立上り部は蓄熱槽として使わず、床下の防湿コンクリートのみ、蓄熱槽として利用する計画としました。

基礎打設後

基礎からは、ブルーとピンクの管がぴょこぴょこと生えているのが見えますが、この管が設備の給水・給湯管です。ご想像の通り、ブルーが給水管、ピンクが温水管となります。

設備配管工事が行われるのは、まだまだ先ですが、基礎工事の段階で、どこからどのルートで設備配管をしていくのか、事前に検討をしておく必要があります。後になって配管が通らない、なんて事のないように。

「岩室の平屋」太鼓梁材の仕上げ方法

太鼓梁

「岩室の平屋」先日、丸太から製材し、太鼓状に加工してもらった梁材。乾燥ボイラーから梁材が出てきたと連絡を受け、状況を確認をしてきました。(おおよそ1週間程度×24時間、ボイラー釜に入れて乾燥を行ったとのことでした。)

今回の丸太材は、伐採してから数年間、そのまま屋外に放置していたので、自然と湿気が抜け、そのままでもじゅうぶん乾燥していたのですが、丸太の中に入っている虫を殺すためと、割れや狂いを低減するため、念には念を入れてボイラー乾燥を行いました。ボイラーから出てきた直後の梁材に触れると、暖かく熱を持っているのが分かります。梁の表情は、ボイラーに入れる前に比べ、やや茶色の色目が増し、以前よりも引き締まった印象です。

梁材を前に大工さんと次の工程、仕上げ方法についての打合せ。全体に曲がりがあり、材寸法もかなり大きな梁材ですので、できる限り、この材の存在感をそのまま生かしたい、と設計者の意図を伝えます。

表面の仕上げが繊細すぎては、この材の存在感を殺してしまうし、とはいえ、あまりにも丸太感を出してしまうと、野暮ったくなってしまうし。。。そこで、仕上げイメージを伝えるため、ネット上の画像をこんなラフな感じ、と大工さんに見せると。

丸太はつり機

ああ、それならと、箱から出してきたのは「丸太はつり機」。掃除機の吸い込み口のような部分に、回転するローター刃が組み込まれていて、丸太の表面を削り取っていく加工道具。私は初めてみましたが、丸太の樹皮の部分を剥がしていくための道具だそうです。ローターのアタッチメントを変えることでさまざまな削り方ができるとのこと。この道具であれば、梁の曲がり部分も曲がりに沿って、上手く削り取っていけそう。

といった流れで、太鼓梁の下側の表面仕上げは「丸太はつり機仕上げ」に決定。側面の製材機でカットした断面には、製材機のノコ目(歯の跡)が残っていたため、そのラフな表情を残すため、仕上げは無しで。果たしてどのような表情に仕上がっていくのか、はつり機の仕上がりが想像できないだけに、とても楽しみです。

仕上がった後日の表情は、こちらの記事で。


柱・梁材とは別に屋根を支える垂木(たるき)部材の加工は、加工形状が複雑なため、大工さんが加工場で手作業にて加工中。屋根勾配に沿って垂木をかけるため、斜めの角度で梁と取合うため。加工形状の形定規を薄べニアで作って、その定規を使って垂木を一本づつ、丸ノコで加工していきます。

とにかく作業場が暑い!ということを除けば、こちらの加工は問題なく、進んでいる模様。ここまでくれば後は、現場での建て方作業を待つだけです。

「岩室の平屋」軒先長さの検討

「岩室の平屋」スタディ模型を使って、軒先長さを検討中です。「岩室の平屋」は、真南の面をガラスの大開口という構成にしています。これだけの面に真夏の日が当たれば、かなりの日射熱が室内に入り込んでしまいますので、真夏の日差しを遮る庇を設けています。逆に、冬場であれば、できる限り日差しを室内に取り込んで、室内を暖めたい、と夏と冬では、日差しを遮る条件が異なります。

南側から差し込む日差しは、夏と冬では、差し込んでくる太陽高度が大きく異なるので、軒の長さをうまくコントロールすることで、夏には陽を遮り、冬には陽を取り込むという調整ができるようになります。できるだけ空調機などの機械の力に頼らず、自然の力を使ったパッシブ(受動的)な室内環境を実現しようという考え方です。

南側に面したガラス窓の高さと軒先の長さから算出すると、日差しの角度が約64度を超えれば、室内に日差しが入らないという事になります。
新潟の太陽高度から算出してみると、
6月中旬~7月中旬は、午前10時から13:00頃まで、
8月上旬から下旬は、午前11時から12:30頃まで、昼の前後に掛けては陽差しを完全に遮ることができる事が分かります。

逆に、10月から5月頃までは、室内へ一日を通して日差しを取り込む事ができるという事になります。
特に寒い12月頃の太陽高度を見てみると昼くらいに29度ですので、かなり室内の奥にまで陽が差し込む計算になります。(天気が晴れればですが)

日差しを遮りたい期間を考慮すると、もう少し軒先を長くしても良いかな、という感じですが、今回、窓際には障子戸を設けますので、ある程度の陽差しのカットは障子戸でも調整できるだろと考えて、庇長さ:窓高さ=1:1.8という比率で設定しました。

寒い地域であれば、もっと軒を短くして日射熱を取り込む方が有利でしょうし、暑い地域ではもっと軒を伸ばして遮る方が有利でしょうし、冬場に太陽が出る日数が多い・少ないで、そのバランスは変わってきます。軒の長さは、建物が建つ地域の気候特性によって異なりますので、いくつが最も適しているかは、一概に言い切ることはできず、気候条件を判断した上で決定していく必要があります。

軒先長さ確認