カテゴリー: 建築を巡る

カルロ・スカルパ設計「カステル・ヴェッキオ博物館」を訪れて

1958-64年カルロ・スカルパ設計「カステル・ヴェッキオ博物館」。イタリア語でカステルとは「城」、ヴェッキオは「古い」、つまり「古城」を意味します。その名の通り、14世紀に建てられた城塞を改修し、博物館へ転用(コンバージョン)した、建築の世界で最も有名で、かつ、優れた改修事例として知られています。

アーチ形状や石積みなどの城塞の既存の古典的なデザインに対して、鉄、コンクリート、ガラス、木などの素材を用いた現代的なデザイン要素を加えていくことで、新しくも懐かしい独特の雰囲気を作り出しています。設計者カルロ・スカルパによって、各所に挿入された新たなデザインは、とてもシャープで現代的、古典的な部分とは対照的に見えます。しかし何故か、その相反する新旧要素は、混ざり合い、馴染み合い、せめぎ合い、まるで以前からそうであったかのように自然な融合を実現しています。古典的部分と新たに加えられた部分は、完全に対比を成していながらも調和し、また、調和しながらも、互いを引き立て合い、組み合わされたことで更なる価値を生み出しているようです。

スカルパは、この建物の改修設計を少しづつ、10年以上に渡って行ったようです。何か新たな要素を加えることによって、既存部分と融合して空間に変化が起こる。その変化を読み取った上で、更に新たな要素を加える。そのような新陳代謝を繰り返すような方法で設計が行われた事で、このような調和が生まれたのではないでしょうか。既存の城塞も、一度に建設したものではなく、時代と共に何世紀も掛けて少しづつ、ある部分を壊しては、ある部分を加えるというような方法で建設されてきたのでしょう。何世紀にも渡る時間の流れの延長線上に今があることを読み取った上で、昔ながらの価値観を尊重し、新たな要素を加わえ、解釈し直していく。まるで、古典建築に対して返歌するように。そのように考えてスカルパは、設計をしていったのかもしれません。

Museo di Castelvecchio
住所:Corso Castelvecchio, 2, 37121 Verona VR, イタリア
開館時間:月曜13:30~19:30、火曜~日曜8:30~19:30
参考web:museo di castelvecchio

カステルヴェッキオ美術館
カステルヴェッキオ美術館

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カルロ・スカルパ設計「ヴェローナ市民銀行」を訪れて

イタリア北部の街ヴェローナの中心街に建つ、カルロ・スカルパ設計の「ヴェローナ市民銀行」(1973-78)。既存建物を増築改修したプロジェクトで、現代的に言えばリノベーション工事ということになります。

既存の古い街並みの中に、挿入された現代的な表情の建築物は、遠目にみると、他の建物に比べすっきりとした印象はあるものの、周囲の雰囲気ととても馴染んでいます。仕上げ材に、イタリアン大理石やイタリアンスタッコなどの伝統的な素材を用いているからかもしれません。

近くに寄って見ると、独特の複雑な幾何学模様でデザインされた外装が目に入ってきます。その細かな各部の造形は、建築というよりも、工芸品と言った方がしっくりきます。一つ一つ丁寧に細部がデザインされ、かつ、その加工にも最新の注意が払われたであろうことが想像できます。

Banco popolare di Verona
住所:ベローナ, イタリア Province of Verona, Verona
開館時間:不明
参考Web:Carlo Scarpa tour in Verona

カルロ・スカルパ設計ヴェローナ銀行

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ミース・ファン・デル・ローエ設計「レイク・ショア・ドライブ・アパートメント」を訪れて

ミース・ファン・デル・ローエ設計「レイク・ショア・ドライブ・アパートメント」。以前、「この建物からは、そのようなスマートな感はなく、ミースの自らの美に対する過激さと泥臭い執念が感じられるようであった」と建物の感想を書いた。改めて考えるとそれは、設計者ミースのグリッド(通り芯)に対する執念からきているのではないだろうか、と思い返した。

この建物は、柱の割付間隔、サッシの割付寸法を始め、床の目地、天井の目地に至るまで、徹底的にグリッド(通り芯)に全てがぴったり揃っている。この建物は2つの棟を雁行配置に並べたツインタワー構成をとっているが、その2棟の配置位置さえ、目地割にぴったりと揃っている。

設計者ミースの、完璧な軸性(グリッド性)を持たせる、という強い意志によって、この緊張感のある美が作りだされているように感じる。同じ間隔で連続する柱、同じ間隔でリズムを刻むスチールサッシなどによっても、この軸性は更に強調されている。一糸乱れぬ、過激なまでの緊張感を持った美しさ。それがミース的な美というものなのかもしれない。

Lake Shore Drive Building
住所:880 N Lake Shore Dr, Chicago, IL 60611 アメリカ合衆国

レイクショアドライブアパートメント

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国場幸房設計「ホテル ムーンビーチ」を訪れて

沖縄本島の恩納村のムーンビーチを取り囲むように建つ「ホテル ムーンビーチ」。沖縄復帰直後の昭和50年(1975)に竣工したホテルは、地元沖縄の建築家、国場幸房によって設計されたリゾートホテルである。

エントランスロビーとレストランを中心に配置し、そこを中心に南北方向へと伸びる2棟の客室棟が美しいムーンビーチをややくびれて取り囲む構成となっている。客室棟の中央部には、全ての階層を上下に貫く吹き抜けが位置し、吹き抜けの上部からは沖縄の強い光と南国の緑が降り注いでいる。その吹き抜けの最上部には屋根は無く、廊下も含めて屋外空間となっている。とてもおおらかでダイナミック空間構成、内部・外部が交互に、かつ、等価に組み合わされた空間構成、それがこの建物の特徴となっている。

ついつい、設計者という職業柄気になってしまうのだが、こちらのホテル、客室エリアの割に、共用部の床面積の割合が非常に多い。ホテルであれば、宿泊費という売り上げ利益を稼ぎだす部分は、客室である。宿泊施設という経営面から考えれば、共用部分を減らしてでも、客室を増やそうと考えがちである。
リゾートホテルというのは、ビジネスホテルなどと異なり、長期で滞在するというパターンが多いのだろう、ゆえに、ある程度の長い期間をその場で過ごすことが想定される。直接的に宿泊費を稼ぎださない部分に、これだけの空間、つまり、建設予算を割くことによって、このホテル内で過ごす時間が豊かになり、他のホテルにはない独創的な滞在価値が生み出されている、と言っても過言ではないだろう。

武骨な作りの連続していく手摺、軽快な床の表現、吹き抜ける潮風、窓外に見える青い海、色々な空間要素が重なり、ホテル滞在中、まるでクルーズ客船に乗船しているような気分であった。設計者が何をイメージしてこの建物を設計をしていたのかは、今では想像するしか手はないのではあるが、このホテルを設計するにあたって、設計者は国外へ視察旅行へ出かけたという話がある。その旅の途中でクルーズ船に乗船し、そのイメージが頭の中にあったのではないかと、勝手に妄想などしてみる。

ホテルムーンビーチ

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象設計集団+アトリエ・モビル設計「今帰仁中央公民館」を訪れて

沖縄本島の今帰仁(なきじん)に建つ「今帰仁中央公民館」を訪れてきました。こちらの建物は1975年竣工、既に45年という時間が経過しています。公民館ですので、特にこれといった明確な建築的機能がある訳ではなく、地域の人たちが集まる場所というのがこの建物に求められていた機能のようです。集まる場所といっても、この南国の温暖な気候の下では、雨が避けられる屋根さえあれば、集まる場という要求自体は満たせてしまいます。こちらの建物も、基本的には大きな屋根を掛け、その下に簡易な間仕切壁で仕切ったいくつかのスペースと、その周りに取りついた回廊というシンプルな構成で成り立っています。

大きなコンクリート屋根は、真っ赤な列柱で支えられています。列柱が配置された半屋外の回廊のどこからでも入ることができ、とても開放性が高く、建物というよりも、屋根のあるオープンスペースといった感じです。ただ、屋根の下に入ると、列柱に囲まれた半屋外空間は、適度に外からの視界が遮られ、落ち着きのある場が生まれています。列柱群が、閉じる訳でもなく、開きすぎる訳でもなく、ある種絶妙な境界を作り出しているようで、外部でありながら、同時に内部であるという両義的な空間が実現しています。真っ赤な列柱と濃い緑の樹々の対比が強く、赤と緑が互いの色を引き立てあい、とても印象に残ります。

屋根の下に佇んでいると、心地よい風が吹き抜けていきます。居心地よい場があれば自然と人が集まってくる、人が集まれば、そこが公民館としての性質を帯びる。人が集まる場所として秀逸な場が実現できているのを感じました。

今帰仁中央公民館

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菊竹清訓設計「都城市民会館」を訪れて

宮崎県都城(みやこのじょう)市に建つ菊竹清訓設計の「都城市民会館」を見に行ってきました。こちらの建物は、私がまだ建築を学び始めた学生の頃、本を見て「なんだ?このすごい建物は!」と衝撃を受けた建物の一つです。トゲトゲの突起を持つ巨大な巻き貝のような外観は一度目にしたら忘れられないものでした。1966年の完成から53年経った今でも、地方都市の平和な町並みの中に明らかな異物として存在感を放って建っていました。

建物の中心に要となる鉄筋コンクリートの構造体を置き、その要の部分から鉄骨の門型フレームが扇状に広がり、円弧型の屋根を吊り下げています。噂によれば、ベビーカーの幌がデザインモチーフになっているとか。確かに昔のベビーカーの幌の形によく似ています。屋根形状が円弧でなく非対称となっているのは、どうやら内部空間の必要性から来ているようです。一方が客席空間、もう一方がステージ部分となっており、部分毎に要求される奥行きや天井高が異なり、それがそのまま外観の形に現れている様です。(既に建物は閉鎖中で、中に入れませんでしたので、私の予想でしかないのですが。)

気持ちがざわつくような圧倒的な外観。その「奇抜さ」は、今でも衰えること無く、そこに存在していました。まるで、その周辺環境を拒むかのように。このような建ち姿が果たして良いのかどうか、私には判断がつきません。建築というのは、(最初は違和感がありながらも)その場所に時間とともに馴染み、人々に大切に利用され、自然とその町に溶け込んでいくものだと思います。この建物が、今でも異物感ある建物だということを、良い意味ととるか、悪い意味ととるか、設計に携わる者として、じっくりと時間をおいて考えてみる必要があると、感じました。

都城市民会館 住所:宮崎県都城市八幡町11−1
2019年4月の時点で、建物は閉鎖中。(その後、2020年3月に建物は解体されました)

菊竹清訓「都城市民会館」
菊竹清訓「都城市民会館」

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吉村順三+奥村昭雄設計「愛知県立芸術大学講義棟」を訪れて

名古屋駅から電車を乗り継ぎ、片道一時間弱。「愛知芸術大学講義棟」に行ってきました。愛知芸術大学は、起伏のある広大な丘陵に位置し、豊かな自然の中に各建物棟が分散して建っています。そのキャンパスの中心にすくっと建つ講義棟。なだらかに傾斜している丘陵とは対象的に、水平な長方形の建物が、強い意志を持って敷地から浮き上がるように存在していました。

白い縦ルーバーで覆われた講義棟は、力強い柱梁により2層分持ち上げれています。講義棟の下部には、ガラスで覆われた廊下が吊り下げられ、さらにその下はピロティとなっています。講義棟は南北方向に長さ100m以上も延びており、下部ピロティはキャンパス内の通り抜け通路として利用されています。吊り下げられた通路空間は、天井高2.1m程度とかなり低めに抑えられており、とても落ち着いた空間となっています。天井には木板が貼られ、両側の壁は全面ガラス窓。窓の外には、キャンパス内に茂る緑の樹々。ガラス面で緑が反射し、増幅し、外部にいるよりも、より緑を意識するような仕掛けとなっています。

講義棟の東・西面に設けられた窓の外には、やや北向きに角度をつけられた縦ルーバーが設けてあり、白いルーバーに反射した光が、講義室内を柔らかく照らしていました。午前中は東から、午後には西から、一日を通して一定の明るさの室内環境を整えることが意図されているようです。 吉村順三といえば、住宅設計の名手として頭に浮かぶのですが、こちらの建物もやはり住宅的なスケールや素材使いがそこかしこに感じられ、建物の大きさの割に、落ち着きを感じる、とても居心地の良い空間だと感じました。

愛知県立芸術大学講義棟
住所:愛知県長久手市岩作1−114
見学時間:原則として平日の午前9時から午後5時まで 詳しい見学案内については、大学窓口に直接問い合わせください。
愛知県立芸術大学電話:0561-76-2683

愛知芸術大学講義棟

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エーロ・サーリネン設計「MITチャペル」を訪れて

エーロ・サーリネン設計MITチャペルを訪れる。前回訪れた時は改修工事中で内部を見学する事が出来ませんでした。という訳で今回、初の空間体験をしてきました。

こちらの建物は、MIT(マサチューセッツ工科大学)のキャンパス内に位置しています。キャンパスに入ると、鮮やかな緑色の芝生と緑の木々の先に赤茶色の円筒形の外観が見えてきます。赤茶色のレンガで覆われた素っ気ない外観は、キャンパスの風景に溶け込んでいて、目を凝らしていないと見過ごして通り過ぎてしまいそうです。

礼拝堂には直接入る事が出来ず、礼拝堂から飛び出したガラス張りのエントランススペースから礼拝堂へとアプローチすることになります。円筒形の礼拝堂の周りには池が配置されており、キャンパスと礼拝堂を隔てています。池の上に掛かったエントランススペースは橋のように、こちらの世界と礼拝堂内を繋ぐ役目を果たしています。重厚な木製扉を開け、エントランススペースに入ると通路の両側の透明ステンドガラスが目に入ってきます。それぞれのステンドガラスは、微妙にテクスチャと色調が変えてあり、霞がかかった様に外部の緑や風景を遮っています。ガラスを透過した色調の異なる多様な光は静かに室内を満たしています。

池の上に掛けられた橋状のエントランススペースを抜け、いよいよ礼拝堂内部へと入っていきます。真っ暗な礼拝堂の正面に、光の柱が見えてきます。祭壇の上部から落ちる静寂な光。天窓から落ちる光は、ハリー・ベルトイアがデザインしたワイヤーアートに当たり、まるで天使の羽が天から落ちてくるよう。その美しさに息をのみます。

次第に暗さに目が慣れ、周囲がぼんやりと見えてきます。建物内部の壁は、祭壇から後方へとひだ状に波打っている事がわかります。(後方へいくに従って湾曲する波長が大きく変化していきます。)また、波打つ壁の下部スリットからは、外部の池に反射した陽の光が揺らぐように入ってきます。

平面図を見る限り、何故内側の壁が波打っているのか、想像できなかったのですが、実際にこの場所に立ってみて設計者の意図が何と無く分かりました。ただの円筒形の壁では、天から落ちてくる弱い光を受け止めることができないと考えたのでしょう。壁が波打っていれば弱い光でも、出っ張った部分には光が当たり、凹んだ部分には影が出来る。そう考えてひだ状の内壁としたのではないでしょうか。

上部から落ちる光は、雲の流れや太陽の動きに応じて、刻々と変化していきます。様々な角度を向けて取り付けられたワイヤーアートの反射板は、外部の光の変化だけでなく、堂内の座る場所によって、光の強さを変え、時には赤く、時には青く色調を変えていきます。同じ堂内、同じ時間でありながら、それぞれの人が異なる体験ができるという、とても面白い趣向があります。

設計者エーロ・サーリネンは、この建築(壁や屋根)を作る事を目的としたのではなく、建築を手段と考え、静寂な光を感じさせることをただ一つの目的としたのではないか、と感じました。あくまで光が主役、建築は脇役と考えて。(主役を引き立てる名脇役ではありますが。)

この空間に佇んでいると、自分がキャンパス内の華やかな場所にいる事を忘れてしまいます。もし皆さんが見学に訪れるなら、出来るだけ朝の早い時間に見学する事をお勧めします。照明でなく、ぜひ自然光でこの空間を体験してもらえればと思います。

MIT Chapel
住所:48 Massachusetts Ave,Cambridge, MA 02139,アメリカ合衆国
開館時間:7:00-23:00
イベント等が行われていなければ自由に見学が可能です。

エーロ・サーリネン設計MITチャペル
エーロ・サーリネン設計MITチャペル
エーロ・サーリネン設計MITチャペル

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ルイス・I・カーン設計「フィリップ・エクセター・アカデミー図書館」を訪れて

ボストン市街から列車に乗って約1時間、エクセター(Exeter)駅近くの「フィリップ・エクセター・アカデミー図書館(phillips exeter academy library)」へ行って来ました。こちらの図書館はエクセター・アカデミー(高校)のキャンパスに建つ付属図書館です。青々とした芝生と緑の樹々が眩しい広々としたキャンパスの中、赤茶色のレンガに覆われた四角い建物が見えてきます。外観の特徴といえば、規則正しく連続する窓と煉瓦張りの柱梁。素っ気ないほど端正な表情をしています。モダンな建物というよりは、古典的な(古風な)雰囲気を漂わせています。

こちらの建物の一番の見所といえば、建物中央に配置された屋根まで繋がる大吹き抜け空間です。吹き抜け空間の4周の壁には正円の開口が設けられており、吹き抜けの上部には全ての階の書架を望むことができます。上部ハイサイド窓から差し込む光は、十字形の梁にぶつかり、拡散して吹き抜け下部へと落ちていきます。ぐるり一周、どこの方向を見ても本棚。この場所にいると、本に囲われていることを感じる事ができます。

カーンの建物を見て感じるのは、ストイックなまでに仕上げ材が制限されているということです。レンガ、コンクリート、木、トラバーチン(石)、ガラス、アルミ。外装も内装も、それだけで全て仕上げられています。また、閲覧テーブルやカウンターなどの人が留まる場所には、レンガ、木、トラバーチンなどの柔らかな素材を、吹き抜けやホールなどの象徴的な場所には、コンクリートやガラスなどの硬質な素材を意識的に使い分けているようです。素材の使い分けによって、ヒューマンスケールの居心地の良い場所と、ヒューマンスケールを越えた超越的な場所を作り出されています。

また建物の大きさの割に、とても細かな作り込みが配慮してある点がても好感が持てました。閲覧テーブル脇の窓には、外光を調整できるよう引き戸が設けてあったり、荷物を置く収納が設けてあったり、ゴミ箱収納がきちんと綺麗に納めてあったり。使う人にとって、とても親切な工夫がそこかしこに読み取れます。本を読んで理解していたルイス・カーンの空間は、論理的で硬いという印象を持っていたのですが、実際に作られた建物を見ると、決して論理的でお硬い訳ではなく、むしろ使う人に寄り添った人間的な建物であるという風に感じました。

phillips exeter academy library
住所:2-36 Abbot Hall, Exeter, NH 03833 アメリカ合衆国
開館時間:Monday – Friday 8:00 – 4:00(その他の休館日はwebで確認ください)
受付カウンターで芳名帳に記名すれば見学が可能です。

phillips exeter academy library
phillips exeter academy library
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  • Louis I. Kahn: The Library at Phillips Exeter Academy
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  • Louis I. Kahn: The Library at Phillips Exeter Academy
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大高正人設計「坂出人工土地」を訪れて

「坂出人工土地」と読んで、いったい何のことなんだ?と、お思いになったかもしれません。そう今回は、建物だけではなく、土地自体から設計したという例を紹介します。場所は、香川県坂出市。駅前商店街の一角に、この人工土地はあります。

そもそも人工土地というのは何かというと、50m×150mの1街区を丸ごと地面から持ち上げ、人工的に作り出した土地(地面)のことです。高さ6mほど持ち上げられた人工土地の下には、柱の区画に嵌るように商店街が入っています。電車の高架の下に入ったお店の並びをイメージすると分かりやすいかもしれません。持ち上げられた人工土地の上には、中層の市営団地がランダムに建っています。

表通りから見ている限りは、なんの変哲もない建物に見えます。しかし、階段を上り、人工土地の上に出ると、驚きの風景が現れます。階段を上ったのに、また地面がある。。。持ち上げられた人工土地の上では、自動車が走り、地面から樹々が生い茂り、自転車に乗る人が目に入ってきます。先ほどまで家々が立ち並ぶ駅前商店街にいたのに、階段を上った途端、ゆったりとした郊外団地の風景が目の前に広がります。近年であれば、人工的に持ち上げた地盤は多々見る事はあるのですが、それはあくまで地盤であって、土地ではありません。「坂出人工土地」は地盤ではなく、土地となっています。個々の玄関の前には、自転車や自動車が置かれ、緑の樹々が育ち、地面の舗装も程よく色褪せ、時を経てまさに人々の生活が根付いた土地となっていました。

人工土地のレベルは均一ではなく、場所ごとに高くなったり、低くなったり階段状になっています。さらに各住棟がランダムに配置されているため、住棟間にはとても複雑な空地が生まれています。人工土地の上を歩いていると、上がったり下がったり、ぐるっと回って元の場所に戻ったり、迷路状の回遊動線となっていて、ぐるぐると歩き回ると、とても面白い空間体験ができます。

坂出人工土地(市営京町団地)
住所:香川県坂出市京町
竣工:1968年
設計:大高正人
※住民の方がお住まいですので、見学の際にはプライバシー等に充分配慮ください。

坂出人工土地
坂出人工土地
坂出人工土地
坂出人工土地
坂出人工土地

重森三玲作庭「重森三玲庭園美術館」を訪れて

京都、重森三玲庭園美術館を訪れてきました。こちらは作庭家、重森三玲の自邸。そこは重森三玲が自ずからの世界感を表した庭がありました。

こちらの邸宅は、京都の昔ながらの町の中に位置しています。気をつけていなければ、庭園美術館とは気がつかず、通り過ぎてしまいそうなほど、素っ気ない外観。が、一歩その塀の中へ足を踏み込めば、驚くような庭が眼前に広がります。

ごつごつとした荒々しい石が、あちらこちら無数に配置されています。大胆かつ繊細。一見、ランダムに並べられたかのように見える石は、見れば見るほど周到に考えられ、そこに必然性を持って、据えられたことが次第に分かってきます。これをバランスの妙というのでしょう。じーっと見ていると、動かない石が意思を持って動きだすかのような不思議な感覚を覚えます。

庭の奥行きは3〜4間程度。塀の直ぐ向うには前面道路。数m先の隣地には境界に隣接して隣家が迫っています。決して広くはない敷地の中に、これでもかと思いを詰め込んだ重森三玲の想い。その想いゆえか、実際の広さ以上の奥行きを感じる空間となっています。この庭を見ていると、まさか塀の外に普通の町並みが広がっているなどとは、想像もつきません。

住宅街の中、塀の中に一歩入ると、そこに広がる小宇宙。小さな中に自ずからが考える世界観を表現する。これが作庭の真髄なんだと、私は理解しました。狭小空間の中に世界感(時間)を表現する茶室と同様に、庭も世界感(空間・時間)を作り出すという意識を持つことが大切なんですね。

重森三玲庭園美術館
住所:京都府京都市左京区吉田上大路町34
電話:
※見学には事前予約が必要です。

重森三玲庭園美術館
重森三玲庭園美術館
重森三玲庭園美術館
重森三玲庭園美術館
重森三玲庭園美術館

丹下健三設計「台北聖心女子大学」を訪れて

台北中心部より電車で北へ30分、更にバスに乗り換え、計1時間。ゆうゆうと流れる淡水河畔、牧歌的な町並みが広がります。台北市街地とは異なり、ここでは少し時間がゆっくり流れているようです。今回の旅の目的は1967年竣工、丹下健三設計による「台北聖心女子大学」です。

淡水河を見下ろす丘の上に建ち、丘の起伏を利用した空間構成が特徴。平面は、一筆描きのように丘の上をクネクネと這うように折れ曲がりながら、奥へ奥へと続いています。円筒状の垂直コアとそれに架け渡した水平スラブ(床)によって構成されています。同時期に設計された「山梨文化会館」や「静岡新聞・静岡放送東京支社ビル」などの建物と同様の造り。が、他の建物と異なるのは、円筒状コアがランダムに配置されており、より動きのある平面空間が生まれていること。

雑誌で見ていたランダムな平面は、ちょっとデザインが過剰すぎるのではないか、と思ってましたが、実際にここを訪れて感じたのは、不条理さが一切ないということでした。丘のアップダウン、緑の樹々と相まって、このランダム平面がとても自然に感じられました。この環境で、真っすぐな平面を配置したのでは逆に、周囲から対立し、浮き立ってしまったでしょう。流石、丹下と脱帽しました。このような敷地の質の読み取りを丹下健三がしていたかどうかは、私の想像でしかありませんが。

建物内には、そこかしこにベンチや空間溜まりが用意されており、学生達は思い思いに腰をかけ、本を読んだり、話をしたりしています。建物のスケールが大きい割に、細部の作り込みはヒューマンスケールで、居心地の良さを感じます。各所の曲面ディテールや、外壁仕上げのざらっとした表情のテラゾー(人造研ぎ出し)が、一役買っているのかもしれません。

日本国内で見る丹下健三の建物とは少し異なる優しい空間が生まれているように感じました。それは、台北の気候や風土が作り出したのかもしれませんね。

台北聖心女中学校
住所:新北市八里區龍米路一段263號
電話:
※見学に関しては施設へ直接問い合わせください。
私が訪れた際は、警備員室から担当者に許可を得て特別に見学させてもらいました。

台北聖心女子大学
台北聖心女子大学
台北聖心女子大学
台北聖心女子大学