年: 2020年

無垢フローリングの経年変化

今回は無垢材フローリングの経年変化について書いてみようと思います。以前は、無垢フローリングは反りがでる、収縮で隙間はできてしまう、などの問題が出ることがありましたが、近年は乾燥技術や加工技術の発展により、無垢フローリングだからといって必ず問題が起こるようなことは無くなりました。(とはいえ、施工方法を間違えれば、問題が起こる可能性が無いとは言えませんので、細心の注意が必要ではありますが。)そのような背景もあり、私の事務所でも無垢フローリングを採用する機会が増えてきました。床材を選ぶ際には、実際の床材サンプルを見て出来上がる空間をイメージをするのですが、そのサンプルはまだ新しい材料で経年変化したものではありません。できあがった当初だけでなく、数年後、数十年後にどのような表情へとフローリングが変化していくのかを想像しつつ、床材を選択することも大切だと思います。

  1. 無垢フローリングの色味の変化
  2. 色の濃くなる樹種・薄くなる樹種
  3. 傷あとも味になる
  4. 色の変化はなぜ起こるのか

無垢フローリングの色味の変化

床を貼ってから11年が経過した栗フローリングの上に、新しい栗フローリングを置いた写真です。当初、柔らかな肌色だった栗材は、飴色がかった深い濃茶色となり、ぱっと見ただけでは同じ樹種とは思えないほど色味が変化しています。

着色したのではないかと思われるかもしれませんが、フローリングを貼った後、たまに雑巾で拭き掃除をする程度で、オイル拭きも何も一切行わないノーメンテナンス状態で、ここまで色味が変化しました。色の変化は無垢材の一番の魅力です。日々の変化は小さく、住んでいる方にとっては気がつかない程度でしょうが、年月を重ねて比べてみれば、大きく色が変化しているのです。

色の濃くなる樹種・薄くなる樹種

経年変化で全ての樹種が濃い色になる訳ではありません。ヒノキ、栗、杉、パイン、オークなどの比較的色目の薄い木は、年を経るごとに濃い色目なる傾向があり、ウォルナット、花梨、アカシア、ローズウッドなど、もともと色が濃い目の木は、色が薄く(浅く)なる傾向があります。また木目が際立つ樹種もあれば、時間とともに木目が目立たなくなる樹種もあります。

上の写真のように杉材に特によく見られるのですが、丸太周辺の樹皮部分(白太/しらた)の淡い色目の部分と丸太中心付近(赤身/あかみ)で色目の濃い部分との色の差は、しばらく経つと淡い部分と濃い部分の色の差は減り、全体的に色が均一になってきます。

傷あとも味になる

床は使っているうちに、モノを落としたり、椅子の脚で擦れたり、と傷あとがついてしまいます。杉やヒノキ、パインなどの柔らかい樹種は特に傷がつきやすい材です。

せっかく無垢材を床に使うのであれば、傷をマイナス点と考えるのではなく、深みや味わいと捉え、プラスと考えた方がよいでしょう。(最近ではわざわざ最初からスクラッチ傷をつけたアンティーク床材も登場しているほどですので)写真は竣工から11年後のヒノキ床材です。みずみずしかった淡い肌色は、飴色へと変化しています。ところどころ、ひっかき傷や穴がついていますが、その傷があるからこそ、この風合いが出せているといっても良いかもしれません。

色の変化はなぜ起こるのか

陽の光が当たる場所ほど、木の色味が早く変化していきます。昔から「木が日に焼ける」といいますが、紫外線が木の成分を変化させることが大きな要因のようです。

ただし、色目の変化は木の表面付近だけに留まるので、表面を削れば元の木肌の色が戻ります。空間の雰囲気を一新したいなら、床面にサウンディング処理(やすり掛け処理)を行えば、床を貼った直後のみずみずしい床色に戻すこともできます。

年を重ねるごとに色味を変化させていくのは、無垢材の大きな特徴です。床材は短期で貼り変えるものはありません。一度貼ったら何年も使っていくものです。使っていくうちに変化し、味わい深くなっていくのは、モノを長く使っていく際の愉しみとなるでしょう。

無垢材の仕上げ種類とソープフィニッシュ仕上げの手順

無垢材カウンターの仕上げには、さまざま方法がありますが、私の事務所でよく採用している塗装仕上げをいくつか挙げ、解説してみたいと思います。

    1. 無垢材カウンターに仕上げが必要なのはなぜか
    2. 無垢カウンター材の仕上げにはどんな方法があるか
    3. 各仕上げの特徴
    4. ソープフィニッシュ仕上げの手順

無垢材カウンターに塗装仕上げが必要なのはなぜか

無垢材カウンターは、水に塗れたり、コーヒーをこぼしたり、手で触ったりすると、表面に汚れが染み込みやすい自然素材です。写真の左手はオイル塗装仕上げ、右手は塗装無しの無垢材に水を垂らして数分後の状態です。(上が西南さくら、下がナラ)オイル仕上げ表面は水をはじき、抜き取れば跡が残りませんが、塗装してない表面は水分が染み込んでいるのが分かります。水であれば乾けば元に戻るのですが、油汚れやコーヒーや紅茶などは跡が残ってしまいます。

無垢材を塗装せずにそのまま使うこと自体は問題ないのですが、濡れ跡や汚れがつく度に、やすり掛けをしていてはキリがありません。塗装仕上げを行うことで、表面に撥水効果を持たせ、汚れにくくすることができます。

無垢カウンター材の塗装仕上げにはどんな方法があるのか

大きく分けて、塗装には表面に被膜を作るタイプと、被膜を作らないタイプの2種類があります。被膜を作るタイプの塗装は、木の表面を塗装被膜で固め、木の呼吸を止めるもの。被膜を作らないタイプの塗装は、成分が木の表面に浸透して、撥水や劣化防止効果を持たせるもの。

被膜を作る塗装仕上げの代表は、ウレタン塗装です。せっかく無垢材を使うのであれば、被膜を作らずに仕上げたいところですが、湿乾変化の激しい場所や気温変化の高い場所などで無垢材を使うと、反りが発生する可能性が高いため、表面を被膜で覆い木の呼吸を止めることで、反りや割れを抑えることができます。ただし、木の表面が塗装被膜で覆われるため、、触り心地は塗装面のつるっとした質感になります。(最近では艶消しで、木の質感が残るウレタン塗装も出てきています)使っていく間に、塗装面にスクラッチ傷がついて表面が曇ってくるため、定期的にポリッシュを掛けるなどのメンテナンスが必要になります。

被膜を作らない仕上げには、オイル塗装、蜜蝋ワックス塗装、ソープフィニッシュ仕上げがあります。いずれも脂分が木の表面に浸透し、防汚効果を発揮するものです。塗料によっては、撥水効果だけでなく、木に栄養分を与えるものもあります。撥水効果は永遠に続くわけではないので、年に数回、定期的に塗装をかけてやる必要があります。表面に被膜をつくらないため、木の質感がそのまま残り、触り心地が良いことが特徴。木の経年変化を愉しめるのもこの塗装の利点です。

各仕上げの特徴

ウレタン塗装は、水で濡らしたような濡れ色に仕上がります。表面が塗装被膜で覆われるため、つるつるとした触感になります。

オイル塗装、蜜蝋ワックス塗装は、いずれも水で濡らしたような色目になります。そのままの木の色目よりも色目が濃く、杢目がくっきりと仕上がります。オイルを浸透させて仕上げるので、ハンドワックスを塗った後のようなしっとりとした触り心地になります。

ソープフィニッシュ仕上げは、何も塗装しない木の自然な風合いのまま仕上がります。さらさら、すべすべの触り心地になるのが特徴です。(撥水・防汚性能はオイル仕上げよりも劣るため、水を常時使う場所に使用する場合には注意が必要です。)

水を多用する個所には耐水性の高いウレタン塗装。木目を強調させたい場合や濃い色に仕上げたい場合は、オイルまたは蜜蝋ワックス塗装。色目や杢目を目立たせたくない場合には、オイルフィニッシュ仕上げと、場所ごとに仕上げを使い分けるのがベターです。わたしは、優しい雰囲気を作りだす際にはソープフィニッシュ仕上げ、空間のポイントとして木を強調する際にはオイルまたは蜜蝋ワックス仕上げと使い分けています。

無垢材を選ぶ際は、水で濡らして表情を見るのが鉄則です。上の写真は、アズキナシという無垢材の右手半分を水に濡らした写真です。水に塗れた部分は、赤みが強く、杢目もはっきりと出ているのが分かります。

濡らすと木の印象ががらっと変わる材もあれば、まったく印象が変わらない材もあります。オイル塗装で仕上げたら、最初見た無垢材のイメージとは違ってしまった、とならないよう、必ず水で濡らして表情を確認してください。

ソープフィニッシュ仕上げの手順

上に挙げた塗装の中でも、もっとも手軽にできるソープフィニッシュ仕上げの手順を紹介します。石鹸水を木の表面に塗るだけですので、誰でも簡単にできて、どんな木に塗っても失敗はありません。手軽にできなければ定期的なメンテナンスも億劫になってしまいますので、誰でも簡単に、というのは大切な要素です。

[用意するもの]

  • せっけん(無添加せっけん)
  • お湯
  • カッター
  • 食器洗い用スポンジ
  • 紙やすり(#400番程度)

固形せっけんは、「無添加せっけん」としてください。無添加せっけんでないと、せっけん成分の他に、漂白剤や着色料などが含まれています。木材表面を漂白(または着色)してしまわないよう、無添加せっけんを用意してください。

固形せっけんをカッターで削ります。えんぴつを削る要領で。お湯1Lに対して、大さじ3~5杯程度のせっけん削り節が必要です。せっけん量は目安ですので、濃いめにしたい場合は多めに入れても問題ありません。

お湯にせっけん削り節を入れ、良く混ぜて溶かします。せっけん削り節が溶け、泡が立ち始めたらソープ塗料が完成です。お湯の温度は高めの方が泡立ちが良くなります。泡立ちが良い方が仕上がりが良くなります。やけどしない程度に熱めのお湯を用意してください。

食器洗い用スポンジのスポンジ面(ざらざらの研磨面ではありません)にせっけん水をよく染み込ませ泡立て、無垢材の表面を軽く撫でていきます。木の表面に泡を擦りつけるような感じで、隅々まで塗り残しの無いように。せっけん水で濡れた部分は、色目が濃く、杢目がくっきりと出ますが、乾けば元の木の表情に戻るので、気にせずに手早く作業を行いましょう。

スポンジで全体に塗ったら、塗りむらがないように布で表面を軽く拭き取ります。風通しの良い日影において、おおよそ30分程度、表面を乾かします。乾燥すると木の表面が少し毛羽立つので、#400番の紙やすりで軽くやすり掛けしたら、完成です。強くやすりを掛けると、せっかく表面に出来たせっけん被膜まで削り取ってしまうので、あくまで表面を整える程度に軽くかけるのがポイントです。


上の写真が仕上げ前のトチ(栃)カウンター、下の写真がソープフィニッシュ仕上げ後の栃カウンター。ソープフィニッシュ仕上げ前後を比べてみると、ほとんど色目に変化はありません。写真をよく見比べれば、仕上げ後の方がやや木目がはっきりと出たような感じがしますが、ぱっと見ではどちらが仕上げをしたのか分からないほど木肌に変化はありません。

さらっとした木の自然な風合いを楽しみたい、木肌の素材感をそのまま活かしたい、そんな時には、ソープフィニッシュ仕上げがおススメです。

「蓮野の平屋」が「住まいネット新潟VOL.30」に掲載されました

9月30日発売の「住まいネット新潟VOL.30」に「蓮野の平屋」が掲載されています。「10年後の住まい」と題し、取材後10年以上たった家を再度訪れ、どのような暮らしをしているか、どのように暮らしが変化しているのかを再び取材・撮影した特集。

「蓮野の平屋」は2008年竣工。今年が2020年ですので、竣工から約12年経ったことになります。建築の設計は、最初の相談から家が出来あがるまで丸1年以上の時間がかかります。設計に集中して取りかかっていると、あっという間に月日は経ち、気がつけば12年もの月日が経っていたようです。まるで浦島太郎です。

7年ぶりの取材(掲載時の取材は2013年ですので)に立ち合い、当時の思い出を施主さん家族と話していると、その時考えていたことやその当時の自分の気持ちを思い出してきました。「空間の中にどんなモノが置かれても、空間内でどんな暮らしをしたとしても、ぶれない強度のある空間を作ること」その当時考えていたのは、包容力のある空間を作ることでした。ちょっと雰囲気の異なるものを置いただけで、ぶれてしまう繊細な空間でなく、どんなものでも受け入れてしまう包容力のある、骨太の空間。

出来上がった紙面を見ると、少し感じは異なるものの、竣工当時の空間の雰囲気そのまま、何も変わってないように感じられます。少しは自分にも包容力のある空間を作れたのだとすれば、うれしいのですが。ぜひ紙面を手にとって見比べてみてください。

リビング風景。窓の外。隣地の竹林を借景として取り込んでいます。高さが抑えられたハンス・ウェグナーのソファーとテーブルが置かれ、重心の低い落ち着いた空間となっています。ペンダント照明の明るさが抑え目なのも、落ち着き感に貢献しています。和とモダンデザインが融合した、家具インテリアは、お住まいの方が自分で選んだもの。さすが、センスあります。

リビングと連続するデッキテラス。リビング床とデッキ床レベルを揃えることで外部への連続性が生まれ、部屋の広さの割に広がりを感じる空間となっています。竣工当時と比べるとフローリングの色は、だいぶ飴色に変化しています。竹林の葉を透過した陽の光がちらちらと揺れながら室内に差し込んできます。

ダイニングテーブル横のスペースは、子供たちが作った作品の展示エリアに。造り付けの収納カウンターは、ダイニングテーブルと高さを揃え、モノが直ぐに手に取れるように。写真や習字、ピアノなど何でも並べて、にぎやかな雰囲気に。壁付けスポットライトをベース照明として使い、ポイントとなる個所にはペンダント照明を吊るし、空間に明暗を作り出すことを意識して照明計画しています。

竹林に面した側には昔ながらの縁側を設けて、ちょっと懐かしい空間に。右手の窓の外には雑木林、左手の障子戸の奥は畳スペース。縁側に腰掛けてぼーっとするのも良し、畳にごろんと寝転ぶのも良し。畳に腰掛けて外を見たときの視線を重視して、あえて天井高さは低めにしています。屋根を支える構造部材の垂木(たるき)は、そのまま表しに。規則正しく連続する垂木が空間にリズムを与えています。

縁側を外から見る。窓の外には雑木林が広がっています。この立地の敷地を探すために、施主さんはずいぶんと土地探しをしたそうです。確かにこんな条件の土地は、そうそう見つかりませんよね。隣地が雑木林という敷地の特徴を最大限生かすため、設計時には、窓の配置や建物の配置を何度も検討しました。

廊下コーナーの展示スペース。壁から分厚い木の棚板を飛び出させ、スポットライトを当てています。明るい場所だけでなく、暗い場所も意識的につくり、明暗の変化がある空間としました。明・暗だけでなく、天井の低い場所・高い場所、開放的な場所・閉鎖的な場所、と場所ごとに空間の質を変えることで、小さいながらも変化に富んだ家となってます。

取材時に撮らせてもらった写真を解説と共に載せてみました。雑誌の掲載記事と見比べながら、お楽しみください。

カウンター・テーブルの無垢材を選ぶポイント

「ダイニングテーブルに無垢の一枚板を使いたい」
「書斎カウンターを個性ある無垢材にしたい」
「長く使うものだから本物の無垢の板を使いたい」

家を建てる際、こだわりのポイントに無垢材を使いたいと考える方は多いのではないでしょうか。しかし無垢材をどう選んでよいか分からない、どこで探せばよいか分からない、どのくらいの値段なのか分からない方が大半のように思います。設計を仕事にしている私でさえ、分からないことの方が多いくらいですので。

私の事務所にも、無垢材をどう選べばよいか分からないのでアドバイスがほしいと相談される方が年々増えてきているように感じます。今回はそんなあなたのために、無垢材の選び方のポイントを書きたいと思います。

    1. どうやって無垢材を選べばよいのか
    2. 無垢材にはどのような種類があるのか
    3. 無垢材を取り入れるにはいくらかかるのか
    4. 無垢材の加工方法
    5. 無垢材の欠点(デメリット)は

どうやって無垢材を選べばよいのか

一言で無垢材といっても、赤みのある重厚な無垢材、白い柔らかな表情の無垢材、長さのあるカウンター材、幅のあるテーブル材、などなど数えきれないほど木の種類があります。といっても、無限に選べる訳ではありません。使う場所が決まっていれば、必要な長さや幅などの寸法も分かっているでしょうし、予算にも限界があるはずです。まず選ぶための手がかりとして、以下の3点を決めることから始めると良いと思います。

  • 購入予算(いくらの予算で手に入れたいのか)
  • 必要な大きさ(長さ、幅、厚さなどの材寸法)
  • 自分の好み(好き嫌い)

購入予算について

無垢材は同じ大きさの板でも、樹種や杢目などの違いで1枚数千円から上は数百万までと大きく金額が異なります。無垢材の値段は、おおむね木の種類によって決まりますので、大体の予算が決めてあれば、この辺りの樹種で選べばよいのだな、と目途がつきます。杉や松(パイン)などの成長の早い木は安め、ウォルナットやカリンなどの成長が遅い木は高め。国内で比較的手に入りやすい木は安め、手に入りにくい木は高めになります。また木目の詰まった材や特殊な杢目が出ているほど金額が上がります。

必要な大きさについて

当然、使う場所によって必要とする大きさは変わってきます。テーブルであればある程度の巾が必要でしょうし、カウンターであれば長さが必要になってきます。無垢材は自然の木を製材したものですので、長さ、幅、厚さとも全て違っています。大きめの寸法で無垢材を購入し、カット加工すれば必要な寸法の材は手に入りますが、必要以上に大きな材を買う分、割高になってしまいます。ちょうど良い寸法の材を探すように心掛けてみてください。おのずと選べる材が絞られてくるはずです。

自分の好みについて

予算も手ごろで、必要な大きさが確保できる材が無事に見つかったとします。しかし一番大切なのは、その無垢材を自分が気に入るかどうかです。この点だけはアドバイスをすることができません。個人的な好き嫌いですので。無垢材をじっと眺め、触りごこちを試し、匂いを嗅いでみてください。この木、好きだな~となれば買い、あまり感情移入できないな~となれば、止めておく。無垢材は、一度購入したら長く使うものですので、気に入るかどうかはとても重要です。もし購入するまでに時間的余裕があるのなら、その場では購入せず、一度家に帰ってじっくりと考えてから決めるのが良いと思います。その場の勢いだけで決めてはいけません。(場合によっては、材木屋さんに取り置きしておいてもらう手もあります。)

無垢材にはどのような種類があるのか


樹種は限りなくあります。といっても、国内市場で流通している手に入る材の中から選ばなくてはいけないので、無限ではありませんが。樹種全てを挙げていてはきりがないので、選ぶ際に考えておく指標を下記に書き出します。

色目:濃い―淡い
硬さ:硬い―柔らかい
端部の形状:耳あり―耳なし(端部に樹皮の部分が残っているか―カットされてストレートになっているか)
木目:はっきりとした木目-おとなしい木目
香り:香りがある―香りがない
質感:ざらっとしている―さらっとしている/冷たい―暖かい

無垢材を取り入れるにはいくらかかるのか

無垢材の値段はそれこそピンからキリなのですが、それでは参考にならないので、仮に一枚7万円程度の表面を仕上げてない無垢板をテーブル材に仕立てるとした場合の金額を計算してみます。

無垢板7万円
+表面サンダー(やすり掛け)仕上げ2万円(材の大きさにより異なる)
+オイル塗装仕上げ1万円(材の大きさにより異なる)
+輸送料2万円(配送地により異なる)
+別途テーブル脚の用意2万円(何を選ぶかによって異なる)
合計14万円→消費税を足して15万円前後。

無印良品で一番大きなテーブルを購入しようとすると約12万円ですので、そのテーブルに数万円足すだけで購入できることになります。もしテーブルトップの無垢材に15万円のものを選べば、合計23万円になりますが、それでもまったく手が届かない金額ではないと思います。無垢材のテーブルであれば、それこそ一生使えますので。もし50年使うとしたら、23÷50年=4,600円/年で無垢材テーブルを手に入れることができます。

上記はテーブルに仕立てる計算をしましたが、カウンターや飾り棚として建物に組み込む場合は、大工さんの取付加工費用がかかります。

無垢材の加工方法

できればカット加工せずにそのまま使えれば一番なのですが、カウンターとして組み込む場合など、その場所に入るようにカットする必要が出てきます。その際に注意する点としては、その無垢板のどの部分を見せるかを考えてカットすることです。節の出ている部分をちょうど真ん中に配置する、杢目の出ている方を手前の見える側に配置するなど、どこカットし、どの向きにするかで木の印象がずいぶんと変わります。(どの部分をどう使うかを考えることを「木どり」すると言います)

購入前には必ず立て掛けてある無垢材を、横に倒して置いて、見せてもらいましょう。立て掛けてみていた感じとはまた違ってみえるはずです。試しに無垢材の左右の向きを変え、次に裏返してみてください。向きを少し変えただけでも、印象が違ってみえるはずです。最初はあまり印象が良くなかったけど、見る向きを変えてみたら印象が良くなったこともあります。

「木どり」が決まったら、木の表皮の部分「耳(みみ)」をカットするか、無くすか、を決めていきます。耳を残せば、木らしい荒々しさが残りますし、耳をカットすれば端正な整った印象になります。

次に仕上げの方法を決めていきます。表面をサンダー仕上げにすれば、表面が平滑になり、杢目が目立つようになります。が、材木を製材する際に残ったノコ目(のこぎりの歯跡)を残す方法もあります。よりワイルドな表情を求めるのであれば、ノコ目のまま、といった選択肢もあります。

無垢材の欠点(デメリット)は

無垢材も、良い点ばかりではありません。自然の素材であるだけに、ひび割れが入ったり、反りがでたり、といった可能性がない訳ではありません。きちんとした材木屋さんで購入することはもちろんですが、もし仮にそのような現象が起こった場合には、引き取り修理や現場修理で対処してもらえるところから購入することをおススメします。

また定期的なメンテナンスも必要となります。(といっても大げさなものではなく、年に数回オイル拭きをしてあげる程度ですが。)メンテナンスが面倒な方にはお勧めできないかもしれません。メンテナンスを繰り返すことで、木の表面は年々、つやが出て表情を変化させていきます。経年変化が愉しめることは無垢材の特典です。

ここぞといった場所に、無機質な集成材や既製品カウンターではなく、個性的な表情の無垢材を取り入れれば、その空間の雰囲気はがらっと変わります。いつも使うダイニングテーブルや書斎のカウンターなど、あなたの気に入った場所に無垢材を取り入れてみてはどうでしょうか。

屋根端部をすっきりと納める方法

「岩室の平屋」現場では現在、屋根工事が行われています。今回の屋根は、ガルバリウム鋼板葺きとしているのですが、ガルバリウム屋根葺きと一言で言っても実は、さまざまな葺き方があります。瓦棒葺き、縦ハゼ葺き、横葺き、と、その他多数。近年は、現場での施工手間を減らすため、パチパチと留め付けるだけで簡単に施工が完了するタイプの屋根葺き工法もあって、施工時間の短縮化、施工手間の軽減が大幅に図られています。(同時に防水性能の向上も年々、図られているようです。)

ガルバリウム鋼板自体も年々、性能が上がり、さび保証20年以上の高耐候製品や遮熱性能を持つ製品も現れてきています。工事コストと屋根防水性能を考えると、他に選択肢がないくらい、ガルバリウム屋根が国内の屋根業界を席巻しているのが現在の状況です。

今回、屋根葺きに採用したのは、昔ながらの手で締め付け加工を行う「縦ハゼ葺き工法」。なぜわざわざ、と思われるかもしれませんが、敢えてこの方向を選択したのは、見た目がすっきりと美しく納まるから。

・軒先に雨どいを取り付けないので軒先が良く見える
・平屋で建物の高さが低く、軒先が近くに見える
・平屋の特徴である水平ラインを強調したい

これらの要素を考慮し、縦ハゼ葺きのハゼ部分を軒先端部でつぶしたシャープなデザインにしたい、と考えました。そんな細かい所まで、と思われるかもしれませんが、そのような小さな部分を積み重ねることで、最終的な建物の見え方が大きく変わってきます。上の写真は、屋根の端部納まり部分。屋根端部でハゼの立上り部分を折り曲げ処理し、水平ラインがくっきりと、すっきりとします。

上の写真は、縦ハゼを締め込んでいくための道具「ハンドロールシーマー」。

職人さんの話では、近年、簡易型のキャップ式施工方法が主流で、手加工をしたのは、数年ぶりとの事。施工方法が簡易化・効率化していく流れの中、このような手間の掛かる工法は、いつか姿を消していくのかもしれません。

隣り合った屋根材の立上り部分を専用の道具で掴んで折り曲げていきます。折り曲げることで屋根材同士が一体化し、継ぎ目のない一枚の屋根となります。端部は大きなペンチのような道具(通称「がちゃ」と呼ぶそうです。)を使ってがちゃ、がちゃと締めこんでいきます。長い召し合わせ部分は、ハンドロールシーマ―で、立上りに沿ってローラーでぐいぐいと押し込んで締めていきます。


設計者としては年々、工法の選択肢が減っていくのは非常に悩ましいことではあるのですが。デザイン上、選べるものが無くなっていくことですので。もしかすると数年後には、手で加工するこのような工法を現場で目にすることが無くなっているかもしれません。

 

ウッドロングエコを使った杉板DIY塗装の手順

「岩室の平屋」は、設計者である私の自邸です。いつもは設計者として現場に関わるのですが、今回は立場を変え、住まい手の立場で記事を書いてみました。DIYをやりたいと考えている方の手助けに少しでもなれば幸いです。

建物の外壁に張る杉板の塗装、通常は塗装職人さんが行うのですが、今回は自分でDIY塗装をしてみました。いつもは設計者として、お客さんのDIY塗装のアドバイスや助っ人をしているのですが、自分が主役となってDIYを行うのは、今回がはじめて。

せっかくの機会ですので、DIYの塗装の手順や掛かった費用を紹介したいと思います。

 

杉板DIY塗装に選んだ自然塗料「ウッドロングエコ」

今回使用した塗料は、天然防腐塗料「ウッドロングエコ」。木の表面に被膜を作らず、成分が木へ浸透し、防腐効果を発揮する塗料です。

外壁に木材を採用する場合は、耐候性やメンテナンス性が重視されるため、一度塗ったらメンテナンスがいらなくなるのは大きな利点。人体に害のない自然素材を原料にしているので、外壁を木で仕上げるエコなスタンスと、とてもマッチします。

ウッドロングエコは、緑色の粉末と水道水を混ぜるだけで作れるので、初心者でも簡単に扱えます。塗装に使ったハケやバケツなどの道具は水道水で洗い流せる点でも、取り扱いが簡単です。

今回は、桶を作って塗料に杉板を漬けながら塗る「どぶ漬け」の方法をとりました。以前、ハケ塗りをしたことがあるのですが、塗装の終わった板を後日みると塗り残し部分が結構あり、最終的には3度塗りまで再塗装をおこなった経験がありました。(木の表面に撥水する部分があると、塗料がうまく材に浸透しなくなるようです。)ハケで3度塗りをする手間を考えると、どぶ漬けを行う方が効率が良いと判断しました。またハケ塗りは、塗っている最中に塗料がぽたぽたと床に垂れてしまい、塗料がだいぶ無駄になっているのではないかと考えたためです。

「ウッドロングエコ」をどぶ漬けする

はじめに塗装の前に塗料を漬け込む桶づくりからスタートします。用意した材料は、以下。

・ブルーシート(長さ5.4以上)×1枚(水漏れ防止のため、厚手タイプがおすすめ)
・桟木(さんぎ:3cm×3cm程度の細長い角棒状の木材)長さ4m×6本程度
・貫板(ぬきいた:幅9cm×厚1.5cm程度の板材)長さ4m×4本程度
・えんぴつ
・のこぎり
・65mmビス(材料固定用)
・充電ドライバー(ビス止め工具)

まずは、桟木と貫板をのこぎりで必要な長さに切り、ビスで固定して桶の外形フレームを作ります。

参考までに、今回のフレームのサイズは、深さ30cm×幅20cm×長さ4.5m程度としました。桟木などは通常、長さ4mで販売されているので2本繋いで4.5mの長さにしています。(塗装する外壁材の寸法によって調整してください。)底に板を貼れば更に完璧ですが、今回は手間を省いて、底板を留めつけず、底に板を敷くだけにしています。

完成したフレームの上に、ブルーシートを被せ、塗料を溜める桶とします。塗料の液漏れ防止のため、ブルーシートは2つに折って2重にしておくのがベターです。

また塗装作業は、地面の上に桶を置いておこなってもよいのですが、作業時に腰に負担がかかるので、やはり台の上に置いて作業した方がおススメです。(今回は大工さんの作業用の台を借りました)

ここまで整えば、後は塗料を作り、桶の中へ入れて塗っていくだけです。
塗装のために用意した道具は、以下。

・塗装用手ぬぐいタオル、または、雑巾などの布
・バケツ(10L程度、水の量を測れるとベスト)
・ゴム手袋

どぶ漬け桶に塗料(ウッドロングエコを水道水で溶かした塗料)を入れます。塗料を満たした桶の中に、塗装する板材を漬け、表面を布で擦ります。

木の節や脂分の多い部分は水分を弾きますので、布で擦ってやって、塗料を材料へ浸透させていきます。板をゴシゴシとぞうきんで水洗いするイメージです。

板の側面や端部は、塗り残しがちな部分ですので、特に入念に。表に続いて、裏面も同様に。(表だけ塗装とする場合は、片面だけでOKです)塗り終わったら、よく水を切って、立てかけて乾燥させます。後は、根気よく繰り返すだけ、です。

塗装作業動画はこちら↓

DIY塗装にかかった作業時間

今回、塗装した板の枚数は200枚でした。板を運ぶ人、塗装する人と、作業を分担して2人ががり作業して、1時間に大体20枚程度のペースで塗れました。朝9時からスタートして昼休憩をはさんで15時まで作業すると、一日に塗れる枚数は100枚。

計算通り、2人で作業して、2日間で板200枚のDIY塗装が完了しました。平屋ですので外壁面積が少なく、この程度の板の枚数で済んでいますが、2階建ての家であれば、倍の板枚数、倍の塗装時間がかかると思ってください。

なお今回は2人で作業をしましたが、もっと人手があって、板を運ぶ人、塗装する人、立てかけて乾燥させる人、と作業分担をすればもっと効率よく作業が進むはずです。テンポの良い音楽でもかけながら、リズムよく作業を進めてください。

「ウッドロングエコ」の塗装後の杉板の表情

写真は、手前から、塗装前、塗装直後、塗装して数時間後の杉板の表情。肌色だった杉材が、落ち着いたグレー色に変化しているのが分かります。

塗装直後よりも時間が経つほど、塗料が木へ浸透・反応し、更に落ち着いた色目になってくるはずです。いかにも着色した木の色でなく、シルバーグレイの木の自然な風合いを求めるのであれば、この塗料はおススメです。

杉板DIY塗装にかかった費用

参考までに、どぶ漬け両面塗りにした場合の塗装費用を計算してみます。

ウッドロングエコ100gの塗料を使って、長さ4m×幅15cm×厚15mmの板が約80枚分、両面を塗れました。両面の塗装面積を計算すると約106㎡。塗料の購入費が約2万円ですので、塗料費20,000円÷106㎡=188.6円/㎡となります。カタログには100gの塗料、刷毛2回塗りで約70~90㎡塗装可能と表示があるので、両面106㎡塗れたとすると、カタログ値よりも約15%増しの面積が塗装できたことになり、かなり効率よく塗れたことになります。

今回塗装した杉材は、表面仕上げが荒木だったため、削った後の木くずや木粉が表面についていました。その粉を塗装をする前に乾いたぞうきんで拭き取って落としたのが功を奏したのかもしれません。また当日は気温が低めで、天気は雨模様だったため、塗料の蒸発量が少ないかったことも影響しているのかもしれません。

塗装屋さんにお願いした場合の塗装費用と比較してみます。見積もり時の塗装工事は、片面塗り112㎡×1,800円/㎡=201,600円(税抜き)→消費税込み221,760円(塗装手間+塗料代)でした。この金額は片面塗りですので、今回のように両面塗りの場合、倍の443,520円掛かることになります。

今回、実際に掛かった費用は、塗料代だけですと20,000円×3袋=60,000円。その他の材料費を含めても、7万円弱となります。つまり、DIY工事を行うことで、373,520円のコストダウンになった計算になります。この計算には自分の人件費(自分の働いた時間)を計上していないので、そのままの金額が全部浮いた!とはなりませんが、かなり大きな金額を抑えることができたことになります。

建設現場は、プロの職人さんが関わっているので、素人では建設工事に参加しにくい印象があります。しかし、この外壁杉板DIY塗装は、他の工事工程とは切り離されていますし、やる気さえあれば比較的に簡単にできる作業です。自分で手をかけた家は、きっと満足感が違うはず。家づくりに参加したいと思う方は、ぜひ試してみると良いと思います。

「上越滝寺の店舗併用住宅」地盤改良の工法について

「上越滝寺の店舗併用住宅」地盤調査を行った結果、軟弱地盤(沈下の可能性あり)との判定が出てしまいました。(実はもう少し良い結果が出るのではないかと、淡い期待を抱いていたのですが。。。)土地を購入する際に、ある程度の地盤強度が分かっていれば良いのですが、たいてい土地の購入時には、地盤調査をしてあることは無く、地盤強度が不明ということが大半です。予想していたよりも地盤が軟弱であれば、後々、地盤改良費用が増えてしまいますし、地盤改良費を多く見込みすぎては、借入額が増え、事業自体が成り立たなくなってしまいます。土地の購入時に、地盤改良予算をどこまで見込んでおくのか、毎回のことながら悩ましい問題です。

周辺の地盤調査データが得られれば、ベストではあるのですが、そう簡単にデータを得られることはないでしょう。もし近くで施工している現場があったらその物件が地盤改良を行ったかどうかを見て、地盤改良が必要かどうかのおおよその検討がつきます。また、もし聞けるのであれば、お隣さんに地盤改良を行ったかどうか、聞いてみるのも良いかもしれません。それらが叶わなければ、周辺の道路や塀にひび割れがあるかどうか、塀や電柱が傾いていないか、などの周辺情報から軟弱地盤かどうかを予測するしかありません。

地盤調査の結果を踏まえ、地盤改良を行うことにしました。今回、地盤改良に採用した工法は「環境パイルS工法」という、木杭による地盤改良工法。(写真に写っている鉄筋の下に埋まっている木が、改良杭です。)私の事務所では、近年、この改良方法を採用することが増えています。

「環境パイル工法」改良工事費用は、他の改良工法に比べて1~2割高めではあります。ただし、建物解体時のコストまで含めてトータルに考えると、コストメリットがあると判断しています。なぜなら、この木杭工法であれば、比較的簡易に杭を引き抜くことが可能だからです。つまり、杭の撤去費用が安い。セメントなどを使った改良方法ですと、杭打設時の工事費用は比較的安くできるのですが、解体しようとすると、解体費用が大きくかかってきます。(場合によっては、解体不能という場合もあります。)

新築の際に、そこまで考える方は少ないのかもしれませんが、もし仮に建物を解体し、最後に更地にして土地を売る場合、改良杭が撤去していなければ、土地の値段は下がってしまいます。(改良杭の撤去費分、土地代が下がってしまいます)ですので、建設~解体に至るまでをトータルに考えれば、全体費用が抑えられ、むしろ割安ではないかと。目先の建設費だけでなく、もっと長いスパンで考えていく事が必要です。

「岩室の平屋」合板パネルによる耐震工法

「岩室の平屋」建て方に続いて、現在、外壁に下地合板を貼る工事が進んでます。なぜ外壁に合板を貼るかというと、建物に耐震力を持たせるためです。今回の建物は、柱・梁を組んで作る在来木造と呼ばれる昔ながらの木造工法を採用していのですが、「筋交い」だけでなく、外壁に「合板パネル」を貼る事で、耐震力を持たせています。最近では合板パネルの種類にも、各メーカーとも様々な製品が出てきていますが、施工費を考慮し、もっとも価格の安いラーチ合板を採用しました。(写真で茶色に見えている壁に張られた合板)

合板パネルで耐震力を持たせる工法といえば、2×4(ツーバイフォー)工法が知られていますが、今回採用した工法は、ツーバイフォー工法の良いところを在来木造に取り入れた、良いとこどりのハイブリッドな工法となっています。線で支える筋交いに比べて、面で支える合板パネルは、建物に掛かる地震力を分散させて伝えることができ、強い揺れにも粘り強く対抗できる利点があります。

写真に見えている斜めにかかっている部材が「筋交い」です。どしんっといった急激な地震力が筋交いに加わると、その力は筋交いに集中的に加わり、筋交いが抵抗できずに折れてしまうケースが阪神大震災などの大地震で多く見られました。しかし、今回の建物には筋交いを併用しています。なぜわざわざそのような地震に弱い部材を採用するのかというと、コストを抑えつつ、建物の耐震バランスを取るため。昔から使われてる筋交いは工法も比較的簡易で、合板パネルを貼るよりもコストを抑えることができるので。

基本的に合板パネルは、外壁に張られますが、外壁にはいくつもの窓が設けられており、場所によっては合板を貼れない個所がでてきます。合板が貼れない部分があると、建物の重心が偏り、その部分に揺れが集中してしまいます。一般的に住宅は、採光のために南側に大きな窓が設けられることが多いので、南側の耐震性が弱くなる傾向があります。そのような場所に補完的に筋交いを設け、全体のバランスをとっているのです。考え方としては、メインで外壁の合板パネルで力を支え、サブで筋交いを使っているイメージです。

とは言え、建物に加わった地震力は単純に合板パネルだけでもっている訳ではありません。実際には、柱や梁などの線材を介して地震力を基礎へと伝えていくため、柱・梁の接合部分の取合いや金物の選定がきちんとしていなければ、地震に耐えることができません。そのため、接合金物の許容耐力や留付け釘の種類や間隔などを、現場で一つ一つ間違いが無いか確認していくことが重要です。耐震の合板は貼ってあるけど、実際には力が伝わってない、では意味がありませんので。

外壁杉板のウッドロングエコDIY塗装

「上越滝寺の店舗併用住宅」外壁材には、杉板張りを採用しています。木は自然素材であるため、無塗装のままでは雨や日差しに晒され、時と共に木の痛みが進行してしまいます。耐候性を持たせるため、木の表面には何らかの塗装を行う必要があります。

が、その外壁面の塗装、塗装屋さんに頼むとかなりの塗装費用が掛かってしまいます。そこで今回、外壁材を住まい手自身でDIY塗装してはどうかとなりまして。塗装費用の削減になりますし、今後の外壁メンテナンスも自分で行えるようになる利点があります。

外壁杉板のDIY塗装に選んだ塗料「ウッドロングエコ」

初心者にも塗れる木材塗料として選んだのは、自然防腐塗料「ウッドロングエコ」。粉末を水道水で溶かすだけで作れる塗料で、その液状の塗料に板を浸すだけと、誰でも簡単に塗れるのが選んだ理由。(塗装屋さんのような特殊な技術は必要ありません。)「エコ」の名の通り、酸化鉄、樹皮、ハーブなどの天然成分から作られた自然塗料で、天然成分が木材に浸透し、耐候性を上げる塗料です。人体に害がない上、環境に与えるインパクトも小さく、一度塗れば再塗装不要の優れた耐候性能を持っています。

ウッドロングエコ「どぶ漬け」塗装

今回は、ハケで塗る通常の塗装方法でなく、プールの中に塗料を貯め、その中へ外壁杉材を漬け、雑巾で表面を擦る、いわゆる「どぶ漬け」で塗装を行うことにしました。

以前、ハケ塗りで塗装したことがあるのですが、材の表面に水はじき部があると塗料が上手くのらず、何度も塗料を塗り重ねた経験がありました。その経験から、何度も塗り替える手間を考えると、塗料のプールに漬ける「どぶ漬け」方法が効率が良い、と考えました。(確実に塗料が浸透することで、木の耐候性も上がります。)ウッドロングエコは、水のようにさらっとした塗料なので、塗る、よりも、塗料水に漬ける、と言った方がイメージに近いかもしれません。

まず初めに、桟木(さんぎ:3cm×3cセ程度の細長い角棒状の木材)と合板で箱状の桶を大工さんに作ってもらい、その上にブルーシートを掛け、塗料を漬け込むプールを作りました。箱状の桶はDIYで自ら作っても良いのですが、加工する道具を持っていて、かつ、木工作業に慣れた人でないと、それなりに時間が掛かってしまいます。今回、大工さんにお願いしたら30分程度でちゃちゃっと作ってしまいましたので、自信の無い方は、大工さんに費用を払って、桶の製作をお願いするのが良いかもしれません。

杉板DIY塗装にかかる日数と削減できた費用

2階建ての建物の外壁面全面となると、外壁量もかなりの量になります。今回は、4mの杉材が340枚でした。1人が材料を運び+塗装が終わったら立てかけ、2人がプールの中で塗料を擦りこむ、と作業を分担しました。昼前から3人で作業して一日で約130枚の塗装が完了。作業時間にして、約5時間とすると、1時間当たり26枚ペース。午前中はプール作りで時間を要したものの、まだ半分まで達していません。

このままのペースで枚数340枚塗るとすると、340枚÷26枚/時間=13時間かかる計算になります。一日5時間作業して3日間、8時間作業して2日間かかることになります。まだまだ先は長いのですが、おおよそ段取りは把握できたので、後は淡々と根気よく塗るだけです。

参考までに、DIY塗装でなく、塗装屋さんに塗装工事をお願いした場合の費用を計算してみます。3人で13時間かかる計算ですので、一日8時間労働として全て塗り終わるまでには3人×2日=6人工(にんく:何人の職人手間がかかったかを数える単位)かかることになります。塗装屋さんの手間代が2万円/人とすると、2万×6人工=12万円。塗料代は別で計算しています。実際にはこの金額に道具代や材料代、会社経費、会社利益が割り増しになるので、少なくとも20万円くらいは削減できた計算になります。

ウッドロングエコ塗装後の杉板の色目

写真の手前は、塗装前の杉板。奥が塗装後の杉板。塗装して数分後には、みるみる緑掛かったグレー色になっていきます。とてもしっとりした色合いで、この杉板を貼れば、新築なのにまるで以前からそこにあったような落ち着いた佇まいになるのではないかと思います。この杉板が貼られた外壁が姿を現すのが楽しみです。

一日終わって、まだ作業はノルマの半分も進んでいません。また明日からは3人でなく、2人での作業になってきます。今日よりも作業効率は落ちるかと思いますが、施主さんのがんばりに期待するしかありません。無理をせず、お願いします。

後日談ですが、その後数えてみたら、塗装する枚数が340枚ではなく、385枚もあったそうで。全ての塗装作業が終わるまで丸4日掛かったそうです。大変お疲れさまでした。

「岩室の平屋」丸太はつり機仕上げ

「岩室の平屋」根曲がり丸太から太鼓状に加工した棟梁。大工さんと加工方法について打合せをして、決定した「丸太はつり仕上げ」。(「斫り=はつり」とは、ノミなどで表面を削り取ることを言います。)現場に組み込まれた梁材と、初めて対面しました。

太鼓状に挽いてもらった梁の側面は、帯鋸(おびのこ=バンドソー)の目が残るよう、敢えて仕上げはせず、加工したままの、荒々しさを残しました。根の部分が曲がった梁材は、存在感が強く、上品に仕上げてしまっては、その木の存在感とちぐはぐになってしまいます。杉皮のついていた丸太表面は、その曲がりなりに丸太はつり機で表面を削り落としてもらいました。丸太はつり機で仕上げた表面は、小さなノミで斫ったような、独特の表情をしています。

太い部分で梁成約70センチ。端正な空間の中に、まるで壁から梁材が生えているような、とても面白い表現になりました。

ちなみに、隣に並んだもう一本の梁は、「手斧(ちょうな)」で仕上げてもらいました(↓下の写真参照)。機械で仕上げた表情とは異なり、一か所一か所が深く削り取られ、ファイヤーパターンのようなメラメラとした杢目が表れています。ちょうなの向きを変えることで、削り取られる向きが変わり、浮き出す杢目が変わってくるようです。木目金という鎚起銅器の技法がありますが、そう!まさに木目、と改めて納得してしまいました。

数年前にも、仕上げにちょうな仕上げを採用した事があるのですが、ここ数年で、手斧(ちょうな)を使える大工さんは、大分減ってしまいました。このような面白い表現が、いつかできなくなってしまうと思うと、寂しさを感じます。

「岩室の平屋」建て方工事

「岩室の平屋」トラックで現場に運ばれた柱・梁材を、クレーンで一本一本吊り上げ、柱梁を組み上げていきます。この作業の事を「建て方(たてかた)」工事と呼びます。今まで基礎しか無かった現場に、ある日、急に建物が立ち上がってくるという、建設工事の中でも最もドラマチックな瞬間です。大工さん達は、梁の上をひょひょいと身軽に歩き周り、あっという間に建物の形が立ち現れていきます。

今まで各加工場や作業所で加工していた材料が、初めて現場に集合し、図面に従って、順番に組み上げられていきます。朝から始まった建て方作業、夕方には屋根下地までが組み上がり、無事に「上棟(じょうとう)」を迎えました。(上棟とは、一番高い所にある棟梁が取り付き、建物の骨組みが組み上がる事を言います)

気温36度。暑い中の作業、お疲れ様でした。きっと今夜はビールがおいしいことでしょう。祝、上棟。

「上越滝寺の店舗併用住宅」柱梁材の加工打合せ

「上越滝寺の店舗併用住宅」柱・梁材が加工場に搬入されました。この後、大工さんの手によって、接手部分の加工作業へと入っていきます。近年では、柱・梁材はPCでデータ入力し、機械で加工を行うプレカット工場で加工を行うが大半なのですが、今回、施工をお願いしている久保田建築では、大工技術向上のため、できる限り手で加工を行うようにしている、とのことでした。

大工さんと打合せをして、接手の位置、取付金物と許容耐力の確認、加工形状、各部納まりなど、一つ一つ漏れの無いように確認をしていきます。せっかく搬入した材料、間違えて加工しては無駄になってしまいますので。慎重には、慎重を重ねて。

柱梁材