吉村順三+奥村昭雄設計「愛知県立芸術大学講義棟」を訪れて

愛知芸術大学講義棟外観

名古屋駅から電車を乗り継ぎ、片道一時間弱。「愛知芸術大学講義棟」に行ってきました。愛知芸術大学は、起伏のある広大な丘陵に位置し、豊かな自然の中に各建物棟が分散して建っています。

そのキャンパスの中心にすくっと建つ講義棟。なだらかに傾斜している丘陵とは対象的に、真っすぐに水平な長方形の建物が、強い意志を持って地面から浮き上がるように存在していました。

愛知芸術大学講義棟ピロティ

白い縦ルーバーで覆われた講義棟は、力強い柱梁により2層分持ち上げれています。講義棟の下部には、ガラスで覆われた廊下が吊り下げられ、さらにその下はピロティとなっています。

講義棟は南北方向に長さ100m以上も延びており、下部のピロティにはテーブルと椅子が並べられ、キャンパス内の通り抜け通路として利用されています。授業の合間には学生たちは思い思いに椅子に座り、それぞれの時間を過ごしていました。

ガラスの吊り通路

吊り下げられたガラス廊下は、天井高2.1m程度とかなり低めに抑えられており、とても落ち着いた空間となっています。天井には木の板が貼られ、両側の壁は全面ガラス窓となっており、キャンパス内に茂る緑の樹々が見えています。まるで空中庭園のようです。

天井が低い割に圧迫感を感じないのは、両側が外部へと開放されているからでしょう。ガラス面で緑が反射し、増幅し、外部にいるよりも、内部にいる方がより緑を意識できる仕掛けとなっています。

縦ルーバー内部

講義棟の東・西面に設けられた窓の外には、やや北向きに角度をつけられた縦ルーバーが設けてあり、白いルーバーに反射した光が、講義室内を柔らかい光が照らしていました。午前中は東から、午後には西から、一日を通して一定の明るさの室内環境を整えることが意図されています。

吉村順三といえば、住宅設計の名手として頭に浮かぶのですが、こちらの建物も大学施設とはいえ、やはり住宅的なスケールや素材使いがそこかしこに感じられ、建物の大きさの割に落ち着きを感じるとても居心地の良い空間が実現していました。

キャンパス内には講義棟だけでなく、吉村順三設計の建物が点在しています。建物単体だけでなく、キャンパスの配置計画も秀逸ですので、豊かな自然を感じながらキャンパス内を散策してみるのが、おススメです。

愛知県立芸術大学講義棟
竣工:1971年
住所:愛知県長久手市岩作1−114
見学時間:原則として平日の午前9時から午後5時まで。詳しい見学案内については、大学窓口に直接問い合わせください。
愛知県立芸術大学電話:0561-76-2683

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