片岡献設計「聖クララ教会(与那原カトリック教会)」を訪れて

夏真っ盛りの沖縄。打合せの合間を縫って以前から訪れたいと思っていた与那原の「聖クララ教会」に行ってきました。与那原へは県庁前からバスで約30分。与那原バス停を降り、丘の上を見上げると、中央が低くなったバタフライ型の特徴的な外観の建物が見えています。

聖クララ教会外観

外観に誘われるように、丘の上へ上へと階段を上っていきます。敷地内は、地元の方の通り抜けになっているのか、途中、さまざまな人とすれ違います。教会というと何となく近寄りがたいイメージがあるのですが、こちらの教会の敷地内は沖縄らしい柔らかな空気が流れており、親しみやすさが感じられます。

1階のエントランスから内部に入り、内部階段を登ると、聖堂が目の前に現れてきます。聖堂の右手には色とりどりの色ガラスが嵌まったカラフルなスチールサッシ、正面には祭壇が見えてきます。

聖クララ教会聖堂内観

入口から奥の祭壇に向かって、天井が次第に高くなっています。その視覚的な効果によって実際の距離よりも祭壇が間近に迫っているように感じられます。これは、神を遠い存在ではなく、より親密で身近な存在として感じるよう、設計者が意図してデザインしたのかもしれません。さりげなくありながらも、とても秀逸な仕掛けです。

椅子に腰掛け、目を閉じていると、海風が聖堂内を涼やかに吹き抜けていきます。色とりどりのガラスが嵌め込まれたガラスサッシは、部分部分で、開放することが出来、開放部分には網戸も取付けてあります。聖堂左右の開口部からは、途切れることなく心地よい風が流れ込んきます。ただ美しいだけでなく、使い勝手も良く考えられており、気候風土を考慮した合理的な造りとなっていることが感じられました。

聖クララ教会聖堂スチールサッシ

聖堂の奥には、沖縄らしい濃い緑の樹々と光の溢れる中庭が広がっており、中庭を取り囲むように半屋外の回廊が配置されています。回廊に出てみると、青々とした芝生と斜めの屋根に切り取られた夏空が目に飛び込んできます。解放感と落ち着きが適度に共存した空間となっています。

聖クララ教会中庭回廊

以前雑誌で見た写真から、硬質で崇高な空間だと勝手にイメージしていたのですが、実際にこの場を訪れて感じたのは、とても親しみやすく、豊かな空間だというということでした。沖縄の、あの温度、あの湿度、あの静けさ。言葉や写真では伝えきれない沖縄の濃密な時間が、そこには存在していました。

聖クララ教会(与那原カトリック教会)
住所:沖縄県島尻郡与那原町字与那原3090
電話:098-945-2355
見学に関する問い合わせは直接教会へ