大工伝統技術 仕口原寸模型

「上越高田の平屋」は、クネクネと角度を持って折れ曲がる平面形状をしています。そのため、直角で交わらない部分が各所に現れてきます。取り合いが直角で無い上、更に勾配屋根が載るという大工さん泣かせの納まり。

このような納まりは2次元の図面では見えてこない部分。大工さんより、3次元的な納まりを確認するのため、仕口周辺を原寸模型を作ってみたので確認して欲しいとの連絡があり、加工場で原寸模型を見ながらの打合せ。(「仕口=しぐち」とは、柱梁が取り合う接合部のことです。)

原寸模型を見ると、確かに複雑な角度で部材が取り合っています。原寸模型では、何事もなくすんなりと納まっているように見えますが、相当の腕がなければ、こんなに上手くは納まりません。組み合わせ部分を上に引き上げると、すぽっと気持ちよく外れます。素晴らしい仕事です。

今回工事をお願いした工務店(久保田建築)さんは、プレカット機械による加工を行なわず全て大工さんが手で加工作業を行なうほどの徹底した姿勢を持っています。プレカットが主流となった昨今、伝統的な大工加工技術を後世に繋げていきたいという思いを持って仕事をしていると。建設コストや効率を考えればプレカットに軍配が上がるのでしょうが、あえてこだわって手加工を行っているとのこと。

良い仕事というのは、効率だけからは生まれてこないものです。どこかに非効率なこだわりがなければ。設計という作業も同じです。効率だけを追い求めた設計からは良いものは生まれてきません。非効率でも、こだわって積み重ねていくことからしか、良いものは生まれてこないのだということを改めて思いました。