毛綱毅曠設計「くびき駅」を訪れて

ほくほく線くびき駅を訪れて。最初、訪れた時の印象は「ナンダコレハ?」であった。設計者の毛綱毅曠(もずなきこう)は、機能から建築を作ることを否定し、思想から建築を作り出していく建築家である。毛綱が設計した代表的建物「反住器」が示すように、アンチ住む器(住むことを否定する住宅)つまり、機能を放棄した建物を作っているという印象があった。

今回訪れた建物は駅舎である。毛綱の思想通り、反駅舎、つまり駅という機能を否定する建物であった。いわゆる駅という建築形式に頼るのではなく、行く人と訪れる人が交差する場として、駅の意味を再度捉えなおしている点で興味深い建築だった。電車で新たに駅を訪れる人に対しては、丸い目のような未来的外観、車や徒歩で駅を訪れるそこに住む人に対しては、杉板貼りの人間的外観が見える。ここに来る人、ここから他の場所へ向かう人。それぞれの感情に対し異なる表情を持つ建築となっている。

駅に掲げられた設計コンセプトには「駅とは本来、日常とは異なる場所への出発の場でした。(中略)駅本来の役割を訪れる人々に感じてもらえるようにと考えています。」とある。駅本来の役割、住宅本来の役割、既存の建築形式を考えも無くトレースするのではなく、それらを否定し、より本質的に求められている場を創り出す。そんな毛綱の設計姿勢がそのままストレートに形に現れている建物であった。

北越急行ほくほく線 くびき駅
住所: 新潟県上越市頸城区手島1021-2
開館時間/休館日:無人駅(詳細は直接施設へ問い合わせください)
電話:025-770-2820(北越急行)

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